肺癌(肺ガン)・症状・検査・療法

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肺癌の種類・原因・検査・診断・症状・療法・類似疾患・転移性肺癌・浸潤・転移



   
概要/肺癌(肺ガン・肺がん)


   肺癌は治療が難しい癌の代表的なもので、初期の肺癌は手術による完治も期待できますが、肺癌が成長していたり、

   リンパ節に転移しているような場合には、再発もあり、手術自体も難しい事も少なくないのが実情です。進行すれば、

   胸膜播腫や遠隔転移(脳、肝臓、副腎、骨など)の懸念もあります。喫煙は、肺癌の最大の原因で、喫煙指数が400

   以上の人は、肺癌に罹るリスクが極めて高いことが知られております。勿論、喫煙は喫煙者本人のみの問題ではなく、

   受動喫煙による大きな問題も抱えております。


   
* タバコの依存性はアルコールやマリファナなどの薬物と比べてもかなり強いとされます。また、タバコによる健康被害

   が顕著になるには時間がかかります。日本で年間の肺癌死亡者数が胃癌を抜いて癌による死亡のトップになったのは

   1998年で、2000年には肺癌死亡は全体で5万5千人と40年間で約40倍に急増したとされる報告があり、心筋梗塞、

   や脳卒中による死亡危険性は、吸わない人の1.7倍という報告もあります。



   
§1 肺癌(肺ガン・肺がん)/肺門型肺癌・肺野型肺癌


   肺癌は
発生部位により肺門型癌と肺野型癌に大別できます。肺門型癌は太い気管支の壁の細胞が癌化したもの

   と考えられ喫煙者に多い肺癌です。この部位は縦隔とよばれ単純胸部x線では映りにくいため発見し難く、気

   管支内視鏡や、喀痰細胞診で発見されます。(スクリーニングは喀痰細胞診、確定診断は気管支内視鏡検査。)

   肺癌は進行の速い癌で、発見した時には既に、浸潤や転移が起こっている場合が多く、特に肺には沢山のリンパ

   節と血管のネットワークが張り巡らされているので癌細胞がリンパ系や血液に入り込み易い。癌は浸潤と転移

   より広がる。

        -肺門型肺癌・肺野型肺癌-




肺野型癌は細気管支、肺胞に発生する肺癌で

非喫煙者にも発生する癌です。比較的早くか

ら単純胸部x線やCT検査などで発見されます。

肺深部に出来る肺癌ですから気管支内視鏡は

届きにくく、細胞診や生検の際は皮膚の上か

ら穿刺したり、補助器具下でのサンプリングを

行います。(スクリーニングは単純胸部x線検

査、CT検査、確定診断は気管支肺胞洗浄法/

BAL、経気管支肺生検/TBLB、穿刺吸引細胞

診、透視下針生検など)肺門型癌は太い気管

に発生する肺癌です。喫煙者に多く発症し易

い肺癌です。いわれているのはヘビースモー

カーに多い肺癌で単純胸部x線検査では発見

し難く、喀痰細胞診、気管支内視鏡で発見で

きます。咳、痰、血痰が出易いのも特徴です。
 
 * 肺癌の概要; 肺は左右2つありますが、 右肺は3ブロック、 左肺は2ブロックに別れている事は良く知られ

 ております。 気管支は右側が10、 左側は9の区域に分けられており、 肺癌は気管支から肺胞までの間の、

 主に空気の通る管の裏打ちをしている細胞、上皮細胞が癌化する事を指します。日本では腺癌が概ね6割を

 占めております。 (従来は扁平上皮癌が多くを占めておりました。 喫煙の多いヨーロッパでは扁平上皮癌が

 多い。)一般的には、検査(内視鏡やCTを使用した針生検)で確定診断の後、 病期診断を行い、それらの結

 果から手術方針が決まります。 手術は3〜4時間で終了し 殆どのケースでは 輸血の必要性もありません。

 翌日から食事を開始し、リハビリ(歩くなど)などをし、約1週間〜10日程度の目安で退院となります。





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§2 肺癌(肺ガン・肺がん)/組織型による分類


   肺癌は
組織型による分類もあります。(図をご覧下さい)。肺癌の種類による割合は、図中腺癌が圧倒的に多

   く全体の約半数を占め、扁平上皮癌は25〜30%、小細胞肺癌は10〜15%大細胞癌は10%未満などと

   なっております。

        -すりガラス陰影-              -組織型分類-


右図組織型分類中にあります腺癌は55%位、

この腺癌の中には癌細胞が肺胞壁に1層に配

列しヘリカルCTではすりガラス陰影として知

られるものがあります。(すりガラス陰影の

み、あるいはごく一部が濃い陰影で大分部が

すりガラス陰影の場合は100%治癒する肺

癌として報告されているものがあります。)



   
§2−1 肺癌(肺ガン・肺がん)/小細胞肺癌(肺癌全体の10〜15%)


   他の組織型肺癌に比べてその細胞の形が小さく、密集して広がる特徴があります。増殖のスピードも速く転移

   し易い厄介な癌です。発見された時点で既に他臓器へ転移している事も多く、手術療法だけでは難しい面を持

   ちますが、抗癌剤や放射線に対する感受性が高いため併用療法が用いられます。殆ど肺門部に発生し、喫煙男

   性に多い癌です。                 * 組織型分類も御参考にご覧下さい。




   * 小細胞肺癌は、他の臓器に転移していても化学療法が有効とされます。しかし、小細胞肺癌は進行が速く、発見後

   の生存期間も平均で1年以内であり、治療後の再発も少なく有りません。小細胞肺癌では、最初の化学療法で効果が

   得られた患者さんは、治療後6ヶ月以上経過して癌が再発した時には、抗癌剤の再投与による延命効果は期待する事

   が出来るとされております。放射線治療(全脳照射による予防照射が一般的)も有効であり、化学療法と併用する療法

   により、転移を防いだり、再発後の症状を緩和するなどの効果が認められているとされます。



   * 小細胞肺癌の多剤併用療法/シスプラチン+イリノテカン、シスプラチン+エトポシド





   
§2−2 肺癌(肺ガン・肺がん)/非小細胞肺癌


   
§2−2−1 肺癌(肺ガン・肺がん)/腺癌(肺癌全体の約半数)


   腺癌は増殖のスピードが速いものと遅いものがますが、比較的小さいうちより転移を起こす傾向があり、発生

   部位も肺深部の肺野部が殆どです。非喫煙者、女性に多く認められ増加傾向の認められる肺癌です。既に述べ

   ましたがすりガラス陰影を認めることがある癌はこの腺癌の中にあります。喫煙に関しては関連が有るものと

   無いものがあると考えられております。     * 組織型分類も御参考にご覧下さい。





   
§2−2−2 肺癌(肺ガン・肺がん)/扁平上皮癌(肺癌全体の25%〜30%)


   喫煙との関係が濃厚な癌です。皮膚や粘膜の大部分の組織は扁平上皮細胞で覆われており、その細胞の形が偏

   平上皮細胞と類似している癌が扁平上皮癌です。早期では局所で広がることが多いため手術療法で早期完全摘

   除できれば治癒の可能性の高い肺癌です。大半は肺門部に発生しますが、肺野部にも発生します。

                                 * 組織型分類も御参考にご覧下さい。





   
§2−2−3 肺癌(肺ガン・肺がん)/大細胞癌(肺癌全体の数%〜10%)


   一般に増殖の速い癌と言われ、主に肺野部に発生し多くの場合、診断時には癌は既に大きく成長しています。

   大細胞癌はその名の如く細胞の大きな癌ですが大細胞神経内分泌癌(LCNEC)という癌は進行が速い癌で小細胞

   癌との区別がつけ難い癌です。              * 組織型分類も御参考にご覧下さい。






          -小細胞肺癌・非小細胞肺癌-             -分化-       

分化とは元の細胞に近づいて行く過程の事

ですがその分化の程度により、高分化癌、

低分化癌、未分化癌にわけられます。分化

の程度が高いものはもう、分化する余地が

少ないという事で細胞の爆発的な増殖は無

いだろうという考えから、予後も比較的良

いと考えられております。ですから未分化

癌、低分化癌という癌はまだこれから大き

く増殖する事が考えられ、予後の良くない

癌とされております。

      * 非小細胞肺癌ステージ(病期)分類例も御参考にご覧下さい。

      * 組織型分類も御参考にご覧下さい。




   * 非小細胞肺癌は転移・再発した場合には有効な治療法は有りませんでしたが、近年延命効果が期待できる抗癌

   剤の組み合わせが見つかっております。 又、化学放射線療法(化学療法と放射線療法を組み合わせる)が、かなり

   効果を発揮する事も分かってきました。分子標的治療薬に関しましては今のところ、充分な効果は得られておりませ

   ん。肺癌の遠隔転移の中で、最も転移が多い脳の場合には 放射線治療(定位照射が多い)はよく採用されておりま

   す。脳以外に転移が無く、転移した癌も1個ならば脳外科手術も検討されます。



   
* 非小細胞肺癌の承認薬;2009、05に承認された注射薬のペメトレキセドナトリウム 水和物は 癌細胞の増殖に不

   可欠な葉酸の代謝酵素を阻害する働きがあります。 これは悪性胸膜中皮腫にも承認されていますが、 この承認薬

   は白金製剤との併用療法で注目する向きがあります。非小細胞肺癌の患者さんに対する大規模な臨床試験の結果、

    シスプラチン(白金製剤) とペメトレキセドナトリウム との併用は シスプラチンをゲムシタビン塩酸塩との併用療法と

   劣らない効果があるとされ、さらに非小細胞肺癌の中でも、非扁平上皮癌に対する効果では、患者さんの生存期間が

   長かったとしています。






   非小細胞肺癌の多剤併用療法/シスプラチンビノレルビンシスプラチンパクリタキセルシスプラチンゲムシ

   タビンカルボプラチンパクリタキセルペメトレキセドシスプラチンシスプラチンゲムシタビンベバシズマブ

   ゲムシタビン(単独)




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§2−3 肺癌(肺ガン・肺がん)/その他の肺癌


   腺様嚢胞癌、粘表皮癌、カルチノイドは特殊な肺癌の中でも早期発見、早期治療で治癒する可能性のある癌と

   言われております。これらの肺癌は比較的若い人に多く、極早期は無症状なのですが、癌が成長すると喘鳴(

   ヒューヒュー、ゼーゼー)を起こすため、気管支喘息と間違う診断で癌治療が遅れてしまう可能性もあるので

   注意が必要です。(気管と太い気管支から亜区域気管支までに発生して気管の内腔で成長してゆく肺癌ですが

   、低悪性度腫瘍と呼ばれ、治癒率の高い癌とされます)
呼吸器内科の専門医に見てもらう事が大切です。(カ

   ルチノイドは小細胞肺癌に類似しておりますが、転移が少ない腫瘍とされているのですが、非定型のタイプは

   リンパ節、肝臓などに転移します。)              * 組織型分類も御参考にご覧下さい。





   
§3 肺癌(肺ガン・肺がん)の原因


   肺癌は男性、女性共に50歳代から増加傾向にありますが加齢により免疫力、修復能力の低下などで罹患割合

   は増加してきます。肺癌は加齢をはじめ、タバコ、アスベスト、ディーゼル排ガス、クロム、コールタール、

   砒素など発症要因がいくつかは要因で有るとしています。 最近研究されております遺伝子の分野での研究で

   は複数の遺伝子が関係しているのでは無いかとの推定もされていますが特定されておりません。石炭ストーブ

   の燃焼による環境汚染や、不純物の混じった植物油の高温調理で換気不十分な環境下でも肺癌リスクを高める

   とされています。(職業性肺癌としてアスベスト、砒素、シリカ、クロムなどを扱うものが考えられます。特に職業性

   肺癌要因と喫煙が重複すればその発癌リスクは相当な大きさにはねあがります。アスベストではアスベスト−と

   喫煙歴−を 1.0とすると    アスベスト+・喫煙歴−/5.17      アスベスト−・喫煙歴+/10.85 

   アスベスト+・喫煙歴+/
53.24   by Hammond.Ann NY Acad Sci という報告があります。10万人当たりの

   年間肺癌死亡者数から算出している)。


   自分はタバコを吸わなくても、夫が喫煙する場合は、夫も吸わない女性と比較しますと、肺腺癌になる危険性は約2

   倍高まるという疫学調査結果が発表されております(by厚生労働省研究班)。夫の喫煙量が20本/日以上であれば、

   その危険性は更に高まります。肺癌の女性の約70%は、非喫煙者というデータもあり、現実をよく考えなければなり

   ません。




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肺癌(肺ガン・肺がん)


   
§3−1肺癌(肺ガン・肺がん) 中皮腫(御参考にご覧下さい)


   
* 近年報告される中皮腫は肺の外側にある胸膜や

消化器を囲む腹膜に出来る悪性腫瘍。中皮種の場

合は殆どアスベストが原因とされているが中皮種

の場合は出来た場所から周囲に広がって行く性質

があり、心臓を包む膜も侵される事が多々有る。

肺癌の場合は遠隔転移を起こし易い。アスベスト

の健康被害は欧米では早くから規制されてきた。

特に健康被害が大きい青石綿と茶石綿はWHOが

1989に勧告した。しかし日本ではその両者を

使用禁止にしたのは1995年で、アスベスト全

てを原則使用禁止にしたのは2004年、潜伏期

間は15〜40年と考えられるため中皮腫の患者

は今後増加することが懸念されている。





   
§4 肺癌(肺ガン・肺がん)の症状


   肺癌の症状は風邪などの呼吸器の病気と共通類似するもので、肺癌を早期に発見するためには症状に頼らず検診

   で発見したい。


§4−1

肺門型肺癌
肺の入口にできる代表的肺門型肺癌である扁平上皮癌は喫煙との関係が深く、早期

から咳や痰が出易く血痰もしばしば確認されます。癌特有の症状ではないが、風邪

だと思って侮ると、問題は大きくなる。2週間以上続く、風邪の治療をしても治ら

ないなどの時は癌の可能性も考慮する必要がある。進行すれば気管支内腔が狭くな

りゼーゼー、ヒューヒューという喘鳴があらわれる。気管支より先の部位に空気が

出入りし難くなり、肺の中の空気量が減ることにより肺がつぶれた状態になる無気

肺や、空気の循環が悪くなるためにウィルスや細菌の感染症をも起こし易くなり、

閉塞性肺炎を起こす事もある。閉塞性肺炎では咳、痰、発熱、息苦しさ、胸痛など

の症状を伴う。閉塞範囲が広ければ呼吸困難も起こします。気管に発生して気管の

内腔に発育する低悪性度腫瘍もある。早期発見なら治癒する可能性が高いが、癌が

大きくなると気管の内腔が狭くなり、気管支喘息と類似の症状を示します。低悪性

度腫瘍といっても治療が遅れると浸潤転移を起こして、治癒は望めない。

           * 肺門・肺野型肺癌模式図も御参考にご覧下さい


§4−2 

肺野型肺癌
初期症状が希薄で周囲の組織に浸潤、転移などから症状が現れて分かる場合があり

、症状が出た段階ではかなり進行している。定期健診で発見したい。

           * 肺門・肺野型肺癌模式図も御参考にご覧下さい


§4−3

周囲組織への浸潤
浸潤した箇所が疼痛を起こす。肋骨・神経に浸潤すると胸痛、食道に浸潤すると食

道の圧迫から食物が飲み込み難くなり、声帯に関係した部位に浸潤すれば嗄声、上

大静脈に浸潤すれば上半身からの血流の戻りが悪くなるために、顔、首、乳房など

がむくみ、皮膚の色が悪くなり、息切れ、頭痛、めまい、眠気などを自覚し横にな

る事により症状は強くなる(上大静脈症候群)。胸水が溜まったり、心臓と心臓を

包む膜に液体がたまる心嚢水では肺や心臓を圧迫するため息切れ、動悸、不整脈を

起こす。肺癌が首の神経に浸潤してまぶたが下がり、瞳孔が縮瞳したり、目がくぼ

む、顔半分が発汗し難くなるホルネル症候群や肺上端に肺癌が発生して腕を動かす

神経に浸潤する事により腕の痛み、麻痺、筋力の衰えなどが生じるパンコースト症

候群などを起こす事がある。ホルネル、パンコースト症候群を合併する事もありま

す。


§4−4
転移症状
肺癌は早期から転移し易いが転移先の症状から肺癌が発見される事もある。


§4−4−1

リンパ節転移
肺門部リンパ節に転移すると咳、気管前リンパ節に転移すると上大静脈が圧迫され

上大静脈症候群、左側気管気管支リンパ節に転移すれば嗄声をおこします。

           * 肺周辺リンパ節の概要も御参考にご覧下さい。


§4−4−2
骨転移
転移場所に疼痛を起こしたり骨折する事もあります。


§4−4−3

脳転移
転移が原因で脳にむくみを生じると頭蓋内圧が亢進し頭痛、吐き気を、また運動中

枢関係に転移すれば手足の麻痺を、小脳に転移すれば平衡感覚が保てず、フラツキ

を起こしたりします。


§4−4−4
肝転移
全身がだるくなる、あるいは胆管が閉塞されれば黄疸も起こします


§4−4−5

副腎転移
副腎は多くのホルモンを分泌する中枢器管であり副腎に転移する事により副腎皮質

ホルモンが過剰に分泌されればクッシング症候群を、副腎の両側に転移すると副腎

皮質ホルモンの不足から悪心、嘔吐、腹痛、低血圧、ショック症状などの副腎クリ

ーゼを起こします。


§4−5

その他
肺癌の進行に伴い異常なホルモンの分泌、食欲不振、手足の指先が太鼓のばちのよ

うに太くなるばち状指、手足の関節の腫れや痛み、筋力の低下など肺癌の浸潤、転

移との関係では因果は明確ではないがこの様な症状も確認される。






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§5 肺癌(肺ガン・肺がん)に類似する疾患


   早期発見のためには肺癌に類似する他の疾患の症状や、検査結果をしっかり識別する事が望まれます。



肺炎 細菌やウィルス、マイコプラズマなど微生物により起こる感染で、病院内でMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)という抗生物質耐性菌に免疫力の落ちている患者が感染する問題もよく耳にします。乳幼児や高齢者は症状が重く、ウィルスより細菌感染の方がより重症になります。間質性肺炎は肺胞ではなく壁に炎症が起きるもので肺炎の症状としては咳、痰、高熱、胸痛、呼吸困難、だるさ、筋肉痛などです。高齢者は重症でも症状が現れない場合があります。

気管支炎 急性気管支炎と慢性気管支炎が有りますが急性気管支炎はウィルスの感染で風邪を引いた時気管支に細菌感染が合併する形で罹患します。その症状は喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)、痰、胸の痛み、圧迫感、息切れなどです。寒冷の環境下で咳き込んだり、それに伴って痰に血が混じる事もあります。 慢性気管支炎は痰を伴う咳が年間に3ヶ月以上続く場合で、炎症が細気管支に及べば症状は強くなり、熱、だるさを伴うようになります。乳幼児、高齢者は重症になりやすく若くても免疫力が落ちていれば重症化する場合もあります。早期に適切な治療を施せば比較的短期間で治りますが、不完全な対応だと慢性化することもあります。慢性化すれば治療には時間がかかります。

気管支拡張症 気管支の一部の壁に傷が付いて拡張し元に戻らない状態ですが、それは主に肺炎などの呼吸器の感染症が原因で気管支の壁が破壊されるために起きると考えられております。慢性的な膿のような痰、痰に血が混じる、喀血もありえ、咳の発作は主に早朝と夕方起こります。拡張が広範囲であれば喘鳴、息切れ、動悸などが強くなります。

気管支喘息 慢性的な炎症で気道が収縮して、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)を伴う発作性の呼吸困難を起こす病気で、遺伝的アレルギー体質と関係が深い。アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎を伴っている、家族にアレルギーの病気の人がいるなどのケースが多々あります。ハウスダスト、ハウスダスト中のダニ、ペットの毛、花粉など原因は様々で、原因不明のものもあります。これらが誘因となったり、風邪、過労、過食、月経、ストレスなどが誘引になる事もあります。

COPD
慢性閉塞性肺疾患
気管支の壁が炎症で肥厚する、肺胞の壁が壊れる、弾力が低下するなどで空気の通りが慢性的に悪くなり、進行すると酸素が不足して炭酸ガスの排出が充分出来なくなる病気です。咳、痰息切れ、喘鳴が起こる事もあります。空気を吐く時に息苦しいのが顕著で、空気の通りが悪くなるにつれ浄化作用が落ちて、ウィルスや細菌にも感染し易くなります。気管支喘息の場合は発作がおさまれば楽になりますが、COPDの場合はいつも苦しく、進行性で不可逆です。喫煙とも因果があるといわれ、症状も肺癌に類似しており、COPDは肺癌の前癌症状と考えて定期的な検査、治療を行うほうが良いという考え方が大切です。


* 喫煙者か元喫煙者で慢性閉塞性肺疾患患者さんの954人のデータを分析した結果、@60歳以下、A喫煙量が20箱年(箱年は1日の喫煙箱数かける喫煙年数)以下の2グループでは、何れも女性の方が男性よりも重症でした。(女性の方が男性よりも喉や気管支が狭いことや、代謝の違いなどが原因ではないかと推定している)


* 慢性閉塞性肺疾患は90%以上が喫煙が原因と見られており、喫煙者の15〜20%が発症します。

その他 器質化肺炎・結核腫・肺クリプトコッカス症など
タバコを止められない男性が、肺癌検診で肺門部に腫瘤性病変を指摘され、肺癌の可能性を強く疑われ、肺生検が行われました。病理診断はクリプトコッカス肉芽腫症で、これは鳩の糞の中に含まれるカビによる感染症です。これが、しばしば肺癌と紛らわしい腫瘤を形成します。









   
§6 肺癌(肺ガン・肺がん)の浸潤・転移


   浸潤は主気管支、臓側胸膜にし易く、ついで胸壁、横隔膜、縦隔胸膜、壁側胸膜に更に縦隔、心臓、大血管、気

   管支分岐部、気管、食道に広がります。転移はどこにでも起こりますが、転移を起こしやすいのはリンパ節、肺

   葉(発生した部位とは別の肺葉)、別な側の肺、脳、骨、肝臓、副腎などに転移し、リンパ節では肺内リンパ節

   、肺門リンパ節、縦隔リンパ節、鎖骨上窩リンパ節、前斜隔筋リンパ節などへ転移します。胸膜に転移したもの

   がさらに胸膜播種性のものもあります。小細胞癌は骨に転移し易くこの場合は症状も出難く、画像診断でも一定

   の大きさになるまで捕らえ難い。そのため腫瘍マーカーで数値が高値になってくる時は転移を疑う。画像でもマ

   ーカーでも異常が無くても転移が無いと判断せず、治療後は定期的に検査をする事が重要になる。

   血行性転移 播種性転移 リンパ行性転移 も御参考にご覧下さい。





   
§7 肺癌(肺ガン・肺がん)が転移した際の治療


   肺癌は転移し易い癌です。他方の肺や脳、骨、肝臓、副腎などに転移し易く転移をしてしまった場合は、転移先

   を手術しても癌が他に発現する可能性が高いため根治を目的とした手術療法は行いません。抗癌剤による全身療

   法、放射線療法が中心になります。脳への転移が確認されればその癌の数が4個以下程度であれば、ガンマナイ

   フで定位放射線療法を実施します。200箇所以上の方向から放射線を一点に照射する効果的な方法です。癌の

   数が多ければ全照射になります。脳の場合は血液脳関門と呼ばれる関門があり、多くの抗癌剤はこの関門を通り

   抜ける事が出来ません。そこで放射線療法とステロイドの投与で多くの場合は症状が軽くなります。

骨への転移の場合は転移箇所の部位が高い確率で

痛んだり、骨が脆くなって骨折もし易くなります

。骨折は一箇所だけではなく、複数の箇所に起こ

る事が多いため、全身療法として抗癌剤が投与さ

れます。(痛みの緩和や骨折予防になる事もあり

ます。)放射線療法は痛む箇所に一箇所当たり5

回以上照射します。(痛みの緩和や骨折予防にな

る事もあります。)骨転移が原因でカルシウムが

血液に溶け出すと高カルシウム血症から意識障害

を起こす事もあります。



脳と骨以外の転移は抗癌剤を投与します。肝臓に

転移しますと全身のだるさや胆管が閉塞すれば黄

疸症状がでます。肝性脳症や白目の黄色くなる、

転移した癌が大きくなるにつれ腹膜を圧迫し、疼

痛がおきます。

   副腎への転移は副腎皮質ホルモンが過剰分泌され、クッシング症候群を起こしたり、副腎の両側転移で副腎皮質

   ホルモン不足も生じます。副腎不全にも陥ります。




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§8 転移性肺癌(肺ガン・肺がん)


   原発性肺癌は最初に肺に発生した癌ですが、肺以外の部位に発生した癌が肺に転移してきたものを転移性肺癌と

   いいます。肺は血管やリンパ節が沢山集まっておりそのため、原発性肺癌が他に転移し易いことは上で述べまし

   たが同様の理由から他からも転移する事が多いのです。特に肺の下葉は血管が多いためにこの部分に転移性肺癌

   が確認されます。そして中でも転移し易いのは乳癌、大腸癌、骨肉種、甲状腺癌、腎臓癌、前立腺癌、子宮頸癌

   、胃癌、.腫瘍、皮膚癌です。そして転移性肺癌の場合は原発性肺癌の治療と異なります。多くの場合原発性

   肺癌は1箇所に発生しますが、転移性肺癌の場合は2箇所以上に発生します。更に癌の場合どこに転移しても最

   初に発生した原発巣の癌の性質を持つため、転移性肺癌の治療は元の癌に効果のある治療を行わなければなりま

   せん。






   
§8−1 転移性肺癌(肺ガン・肺がん)の治療


   肺に癌が転移しますと、次第に呼吸困難などの症状が現れますし、QOLも大きく低下します。進行すれば命が危険

   になりますが、大きく切除するなどの治療は難しい臓器です。





   
§8−1−1 手術療法/転移性肺癌(肺ガン・肺がん)


   腫瘍が小さく、数が少なければ、患者さんが手術に耐えられる体力があり、原発癌の成長が止まっている場合に手術

   が検討される事があります。内視鏡を使う胸腔胸手術が近年では増加しております。患者さんへの侵襲が少なく、負担

   の軽い手術です。





   
§8−1−2 電磁波焼灼法/転移性肺癌(肺ガン・肺がん)


   マイクロ波焼灼法とラジオ波焼灼法が有りますが、転移性肺癌ではラジオ波焼灼法が先進医療として指定されており

   ます。電極を腫瘍にさして熱を発生させて、腫瘍を殺す方法で、手術に耐えられない症状の患者さんも、ラジオ波

   焼灼法は受ける事が可能です。転移性肺癌の場合には治療施設は限られております。延命効果に付いても充分明

   らかになってもおりませんので、施療された患者さんも少数です。





   
§8−1−3 化学療法/転移性肺癌(肺ガン・肺がん)


   使用される抗癌剤は原発癌に効果のある、薬剤が使用されます。全身化学療法が一般的ですが、肺の気管支動脈に

   直接抗癌剤を注入する動注法(BAI)も試みられる事もあります。





   
§8−1−4 放射線療法/転移性肺癌(肺ガン・肺がん)


   転移性肺癌の場合には、放射線療法が選択される事は殆どありません。肺に放射線を照射しますと、肺の組織が硬化

   して呼吸困難に陥る可能性があるためですが、化学療法に治療効果が認められない場合や、腫瘍が原因で呼吸困難に

   陥ってしまう場合などでは放射線療法が選択される場合があります。





   
§8−1−5 対症療法/転移性肺癌(肺ガン・肺がん)


   転移性肺癌の治療が難しい場合には、症状を和らげ、QOLを向上させることを目的として治療をおこないます。

   例えば、気管支がふさがれれば、レーザーを照射して腫瘍を焼いたり、ステントを気管支にいれ、気道を確保したり、

   咳が酷い場合にも、癌に放射線を照射する事により症状が軽くなる事もあります。気管支が完全に閉塞して、片方の

   肺が殆ど機能していない場合には、他の肺や、心臓の負担を軽減するために、片肺を切除する事もあります。痰を

   吐き出し易くするために去痰役を処方したり、咳を抑えるためには鎮咳役を処方します。モルヒネは呼吸をゆっくり

   させて、咳を抑える効果を持ちます。ステロイド薬や利尿薬を投与して症状を軽減する事もします。




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§9 肺癌(肺ガン・肺がん)の検査


    
§9−1 スクリーニング


    
§9−1−1 単純胸部x線検査/スクリーニング/肺癌(肺ガン・肺がん)


    背中側からx線を照射する直接撮影で主に肺野型(末梢型)肺癌を発見するのには有効ですが縦隔部に付い

    ては映りません。異常が発見されれば精密検査をする必要があります。異常の疑いイコール肺癌では有りま

    せん。肺結核、肺炎、肺の良性腫瘍なども陰影として映ります。又、単純胸部x線検査では2p以下の腫瘍

    は発見し難いといわれます。2p以下の腫瘍を確認するには喀痰細胞診、CTなどで調べます。





    
§9−1−2 喀痰細胞診/スクリーニング/肺癌(肺ガン・肺がん)


    顕微鏡による癌細胞の有無の確認で50歳以上、血痰、ヘビースモーカーの場合は老人保健法による公的補

    助も受けられます。起床後うがいをして口腔内を綺麗にした後、溶解液の入っている容器に大きな咳をして

    痰を採取します。唾液、鼻汁が混じらないように注意してサンプリングします。痰は3日間連続採取します

    。痰がどうしても出ない人は検査できません。喀痰細胞診は肺の入口の癌(肺門型肺癌)を発見する後適し

    ます。





    
§9−1−3 CT検査/スクリーニング/肺癌(肺ガン・肺がん)


    単純x線検査より精度が高く2p以下の癌を発見できます。但し、CT検査を毎年実施することは放射線被

    曝量の問題で継続には賛否があります。最終的には患者さんが決定しますが、2p以下の腫瘍を心配する場

    合はその時点で判断される事になります。MDCTと呼ばれる他方向CT検査もあります。色々な方向の断

    面画像、3次元画像を確認できます。脳、腹部など遠隔転移の確認のための検査にも用います。





    
§9−1−4 MRI検査/スクリーニング/肺癌(肺ガン・肺がん)


    肺癌が転移し易い部位はリンパ節、脳、肝臓、副腎、骨などですがその様な転移し易い部位も確認します。





    
§9−1−5 PETCT/スクリーニング/肺癌(肺ガン・肺がん)


    癌細胞の栄養はブドウ糖ですが、その性質を利用した全身検査が可能ですが脳に関してはブドウ糖の消費が

    激しく癌が鑑別し難いため用いられません。





    
§9−1−6 ヘリカルCT/スクリーニング/肺癌(肺ガン・肺がん)


    
ヘリカルはらせんの意味です。ヘリカルCTはx線を連続的に照射して身体を輪切りにし、連続撮影する技

    術で10秒程度息を止めて肺全体を撮影します。その技術を更に進化させたものにはマルチスライスCTな

    ど優れた技術もあり、見たい方向の画像や臓器を立体化する画像撮影技術も確立されております。このヘリ

    カルCTはすりガラス陰影の発見や極小さな肺癌、単純胸部x線検査で発見できない心臓や背骨の影になっ

    てしまう肺癌も発見できるようになってきております。まだ自治体では高額、立証性などの理由からヘリカ

    ルCTは殆ど採用されておりませんが人間ドックなどではオプション選択可能の施設もあります。






    
§9−1−7 超音波検査/スクリーニング/肺癌(肺ガン・肺がん)


    皮膚にゼリーを塗りその上からプローブを当ててモニターで確認します。超音波のため放射線被曝の心配が

    無く妊婦でも使用されます。様々な臓器検査に使われますが特に肝転移の有無に有効です。





    
§9−1−8 骨シンチグラフィー/スクリーニング/肺癌(肺ガン・肺がん)


    体内に放射性物質を注入して底から発する放射線の分布を画像化したもので骨に対する放射線の分布を映像

    化したものが骨シンチグラフィーです。骨に癌が転移するとその部分が再生が盛んになりますがアイソトー

    プでその代謝の盛んな部位を確認することが可能になります。但し、アイソトープは外相いや炎症のために

    骨の再生が盛んになった箇所にも集積するため、必ずしもその部位が癌であるとは限りません。CTやMR

    Iを組み合わせて判断する必要が生じる場合もあります。





    
§9−1−9 腫瘍マーカー/スクリーニング/肺癌(肺ガン・肺がん)


    癌細胞などが血中や尿中に放出した物質から、癌細胞の有無を知る目的で利用されているもので肺癌の腫瘍

    マーカーとして頻繁に使用されるものはCEA.CYFRA21-1.SCC.NSE.SLX.I-CTP.ProGRPなどです。腫瘍マーカ

    ーの多くは癌特有のものでは無く、腫瘍マーカーの数値だけで癌の有無や癌を診断する事は出来ず、一定の

    目安として使われるのですが、癌の治療後再発、転移が疑われる場合などに一つの手がかりになります。抗

    癌剤の効果を知るためにも利用される事もあります。




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§10 確定診断/肺癌(肺ガン・肺がん)


   癌細胞の特定には欠かせないのが確定診断ですが、診断の検査のために合併症が起きることがあります。合

   併症で多いのは気胸、出血です。気胸は軽度の場合が多いのですが、皮膚の上から針を刺すCTガイド下生

   検では気胸のリスクが高くなる様です。ケースによっては肺から漏れた空気が胸腔に溜まって肺が圧迫され、

   痛み、息苦しさを感じる事もあります。もれた空気が多いようであれば胸腔ドレーンで空気を抜く処置が必

   要になります。一方出血の方は気管支、肺胞からの出血、血痰、喀血などがありますが出血量は少なく自然

   に止まる事が殆どと説明されております。

但し気管支からの出血が肺に流れ込む事があり、そ

の様な場合が発生したら正常な肺を上にして横臥し

すぐに止血処置を施さなければなりません。又、局

所麻酔剤ではアレルギー中毒、意識喪失、痙攣など

を起こす危険性のある薬剤もあります。(リドカイ

ン)その場合は緊急措置が必要です。まれに肺に針

を刺した際、空気が入り、それが冠動脈や脳血管に

詰まってしまう空気塞栓を起こす場合もあります。

このように診断にはリスクが伴います(命に関わる

リスクはまれです)が、充分なインフォームドコン

セントや、肺癌リスク、など医療関係者に充分な説

明と納得の後に選択をします。






    
§10−1 気管支内視鏡/確定診断/肺癌(肺ガン・肺がん)


    主に肺の入口に発生する肺門型癌の診断に有効で内部を直接観察し、病理学検査をするために異常が疑われ

    る組織をサンプリングする事ができます。検査のために局所麻酔剤を喉にスプレーしモニターを見ながらフ

    ァイバースコープを挿入してゆきます。組織サンプリングする検査として気管支肺胞洗浄法(BAL)やブ

    ラッシング、経気管支肺生検(TBLB)などの方法がとられる事もあります。





    
§10−2 蛍光気管支検査/確定診断/肺癌(肺ガン・肺がん)


    ファイバースコープの先端に特定の波長の光を発する器具を取り付けて観察する方法で、正常粘膜は自家発

    光するのですが、癌細胞は発光しない性質を利用して明確に観察します。早期肺門型肺癌や前癌病変を発見

    できる方法です。





    
§10−3 穿刺吸引細胞診・透視下針生検/確定診断/肺癌(肺ガン・肺がん)


    どちらも針を刺して検査しますが穿刺吸引細胞診は皮膚の上から細い針を刺して異常が疑われる部分の細胞

    を採取します。透視下針生検は局所麻酔後、X線透視下、CTガイド下で針の刺す方向や深さが確認できる

    方法でファイバースコープの届かない部位の細胞を採取する時に使用します。





    
§10−4 胸腔鏡検査/確定診断/肺癌(肺ガン・肺がん)


    気管支内視鏡や針生検でも診断が付かない場合、基本的に全身麻酔をして胸壁の3箇所に小さな穴をあけ胸

    部専用の内視鏡(胸腔鏡)を鏡腔に挿入し、肺を見ながら肺、胸膜、リンパ節などの組織を採取します。患

    者さんの負担が大きいのですが、気管支内視鏡や針生検では癌細胞が特定できない場合、画像診断で癌の疑

    いが晴れない状況下ではこの方法を患者さんの同意選択の下に実施されます。その場合、検査中に病理診断

    を実施し癌が特定できればそのまま手術を実施することがままあります。





    
§10−5 胸腔穿刺・胸膜生検/確定診断/肺癌(肺ガン・肺がん)


    状況によっては胸水が溜まる事が有りますが、胸腔穿刺はこの胸水を局所麻酔後、胸腔にコープ針を刺して

    サンプリングし、癌細胞の有無を調べます。胸膜生検は局所麻酔後、胸膜に針を刺して組織サンプリングし

    癌細胞の有無を確認する検査です。胸水が溜まる場合は肺が圧迫される、息苦しくなる、肩が張る、背中が

    痛くなるなどの自覚症状がでますが、胸水を抜けばその症状は改善します。




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§10−6 縦隔鏡検査/確定診断/肺癌(肺ガン・肺がん)


    全身麻酔後、胸部を小さく切開し縦隔鏡(内視鏡)を入れて縦隔の確認、縦隔リンパ節を採取して転移の有

    無を確認する検査です。全てのリンパ節に届くわけでは有りませんので確認できないリンパ節もあります。

    切開のために起きる合併症として、出血、気胸などが起こるリスクはあります。この検査は日本でも限られ

    て施設でしか実施されておりません。





    
§10−7 病理学的検査/確定診断/肺癌(肺ガン・肺がん)


    癌である事の確定をするためにはどうしても必要なのが病理学検査です。細胞診と生検が有りますが、採取

    された細胞を顕微鏡下で細胞の形の異型度を判定(陽性、擬陽性、陽性)するもので、生検は異常が疑われ

    る部位の組織を切り取り、顕微鏡下で細胞の異型度、構造を調べて検査します。

    生検の場合、癌確定診断だけでなく、病理学的な組織型の診断(どのタイプの癌であるか)にも用いられま

    す。生検は高確率で診断可能です。





   
§11 肺癌(肺ガン・肺がん)の療法


   肺癌治療に際し最も重要になるのは組織型病期、患者さんの状態(体力、気力など)で、治療方針はこれら

   を考課して決定されます。療法には局所療法(手術療法、放射線療法、レーザー療法/PDT、 凍結療法)と

   全身療法(化学療法/抗癌剤・分子標的治療薬、 免疫療法)があり、早期肺癌には局所療法、進行肺癌には全

   身療法が選択されております。病状が進行して治癒の難しいと判断される場合には緩和ケアが選択され痛みを

   緩和コントロールするペインコントロールや患者さんや御家族への精神的なケアもサポートされます。




   
* 転移・再発時の緩和療法の例/肺癌(肺ガン・肺がん)

肺癌の治療は難しいことが多いのですが、治療

法の進歩にも関わらず、現在でも、症状を緩和

するために行われる緩和療法はとても大切な位

置付けにあります。胸腔に溜まった胸水は、呼

吸を苦しくするために、胸水を体外に排出しま

す。胸膜穿刺などにより胸水を排出しますが、

一般的には、胸水がたまらないように胸膜と胸

の壁を抗癌剤や抗生物質などで癒着させます。

癌の塊によって気管を圧迫し、呼吸が困難になったときには、放射線治療やレーザーによって癌を破壊したり、

ステントを気管に通して、気道を確保します。モルヒネを使用したり、酸素吸入なども行います。心臓より上

にある上大静脈が圧迫され、頭や腕がむくむ事があるようであれば、放射線照射により癌を縮小させたり、ステ

ントも使用する場合もあります。




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§11−1 肺癌(肺ガン・肺がん)の病期別療法/非小細胞肺癌



病期          非小細胞肺癌の治療法(以下のいずれかの療法が選択されます)
     (非小細胞肺癌 病期例 もご覧下さい) 
* 組織型分類も御参考にご覧下さい。

TA @外科手術
A放射線療法(手術が適切でないと判断される場合)
Bレーザー療法(光線力学的治療)

TB @外科手術
A放射線療法(手術が適切でないと判断される場合)
B手術後に抗癌剤治療(術後補助化学療法)
C抗癌剤治療の後に外科手術

UA
UB
@外科手術
A放射線療法(手術が適切でないと判断される場合)
B手術後に抗癌剤治療(術後補助化学療法)
C抗癌剤治療の後に外科手術

VA @外科手術(現在推奨されておりません)
A外科手術と放射線療法の併用
B抗癌剤治療or抗癌剤治療と放射線療法の後に手術(手術で取りきれるなら標準療法)
C放射線療法と抗癌剤治療の併用(手術が適切でないと判断される場合の標準療法)
D放射線療法(手術、抗癌剤治療が適切でないと判断される場合)
E手術後に抗癌剤治療(術後補助化学療法・手術で完全に取りきれたと判断された場合)

VB @抗癌剤治療と放射線療法の併用療法(標準的な療法)
A抗癌剤治療or抗癌剤と放射線療法の後に手術
B放射線療法(手術・抗癌剤治療が適切でないと判断される場合)
C抗癌剤療法(癌性胸水が溜まっている場合、胸膜播種の場合の標準的治療)

W @抗癌剤治療(標準的な治療)
A抗癌剤治療と放射線療法の併用
B放射線療法(抗癌剤治療が適切でないと判断される場合)
C痛みや他の苦痛など症状の緩和を目的とした治療(抗癌剤治療が適切でないと判断される場合の標準的治療)







   
§11−2 肺癌(肺ガン・肺がん)の病期別療法/小細胞肺癌



病期    小細胞肺癌の標準的な治療法 * 組織型分類も御参考にご覧下さい。

T(早期限局型) 手術&術前化学療法or術前化学療法・術後化学療法

U・V(限局型) 化学療法&放射線療法

W(進展型) 化学療法







    
§11−3 肺癌(肺ガン・肺がん)/手術療法


    肺は右肺が3葉、左肺が2葉に分かれています。肺癌の基本的な手術療法としては癌のある肺葉一つを切除

    する肺葉切除術が標準です。肺葉をブロックごと切除し、周囲のリンパ節も郭清します。リンパ節郭清は肺葉

    の間、肺門リンパ節、縦隔リンパ節です。肺癌の広がり具合では、二つの肺葉、あるいは片肺全部を切除する

    事もあります。肺葉切除術では胸腔鏡補助下手術といい、10cm程度の切開創から胸腔鏡を肋骨を避けて入

    れ、モニタリングしながら手術をします。切開位置は肺癌の位置により異なります。出血量も少なく、入院も

    1週間程度〜10日未満というところです。痛みの程度に付きましては人それぞれ感じ方に差が有るようです

    が、胸腔鏡を使う手術、検査は傷口が小さいため、外観(傷跡)、痛み、合併症、社会復帰が早いなどのメリ

    ットがあるようです。胸腔鏡手術の場合のデメリットは視野の狭さから、血管を傷つける事がある事がありま

    す。リンパ節郭清は実施するのが現時点では標準で、今後、免疫機能への影響やセンチネルリンパ節の存在、

    位置の問題などリンパ節郭清に関して変動要因もあり技術の進歩(検査技術、最先端治療技術)、学術的、病

    理学的解明が進んでくる事により、変遷してゆく可能性もあります。




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§11−3−1 縮小手術/手術療法/肺癌(肺ガン・肺がん)

     肺癌の進行具合によっては肺葉切除術より更に手術の範囲を縮小した、縮小手術も実践されています。縮小

     手術、区域切除術などと呼ばれていますが、近年の医療の傾向を示した低侵襲方向を目指した手術も行われ

     ています。ただ、縮小手術の場合は周囲への浸潤している癌を見逃す可能性があるため局所再発する可能性

     もあります。2p以下の癌に付いては、2010年代中盤頃には肺葉切除術と縮小手術の再発リスクなどの

     大規模比較データが発表される可能性もありメリット、デメリット、是非論も明確化されてくるでしょう。





     
§11−3−2 拡大手術/手術療法/肺癌(肺ガン・肺がん)

     肺癌の浸潤の程度が進んでいる場合は、標準手術を超えた拡大手術で対応します。癌を取りきれないケース

     では場合により、肋骨、椎骨、横隔膜、心膜及ぶものがあればそれだけ身体に負担のかかるものとなり、治

     癒を望めないケースなら、手術の選択をすべきでなく、手術の決断をしても予後は楽観できないものとなり

     得ます。肺癌が大きく進行している場合は術前補助療法を選択する事もあります。ネオアジュバント療法は

     術前に化学療法、放射線療法を施してから、手術を選択します。肺癌縮小を得られれば手術がし易くなるた

     めです。合併症にもお気を付け下さい。喫煙は合併症リスクを高めます。早期離床も大切です。

     合併症は手術中よりも手術後に起こるものが多いと考えられておりますが、全体では3割、重大な合併症は

     1割程度といわれています。合併症で重いものは肺炎、気管支ロウ膿胸肺塞栓、心筋梗塞、脳梗塞、軽

     いものでは不整脈、出血、嗄声、無気肺、肺ロウなどで殆どは経過観察しているうちに治ります。




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* 気管支瘻/気管支を切断しその縫合箇所から空気が漏れることで熱、胸水が溜まるなどです。胸腔にドレ

     ーン(排液管)を挿入して胸水の肺浸入を防止して、膿胸の発症を防ぎます。

     
* 膿胸/胸腔内に膿が溜まるもので本来無菌の胸腔内は気管支瘻や肺瘻などにより細菌感染により化膿します。

     
* 肺塞栓/命に関わるもので身体を動かせない時間が長いと血液が固まり血栓ができ易くなりますが、その血栓が

     肺動脈に詰まって肺塞栓をおこします。呼吸困難などを突然起こします。離床を早くして歩く事などが必要に

     なります。

     * 語句/無気肺;肺に含まれる空気が減少して肺がつぶれた状態、閉塞性肺炎;気管支が詰まったために起

     こる肺炎、椎体;背骨を構成する椎骨の前の部分にある円柱、
 
     悪性胸水;癌細胞を含む胸水





    
§11−4 肺癌(肺ガン・肺がん)/放射線療法


    放射線療法は手術不適応、症状緩和、転移予防など重要な役割を果たします。放射線を細胞に照射する事によ

    りDNAに創を付け、増殖を抑えます。正常細胞よりもよりダメージを癌細胞に与えるので放射線はがん治療

    に欠かせません。非小細胞癌治療法小細胞癌の標準的療法にも有りますように放射線を用いた根治療法が

    組み込まれております。放射線療法は手術療法のように直接身体に傷をつけないので痕跡は残るとしても、負

    担が少ない療法といえます。術前補助療法、化学療法との併用、転移症状の緩和などに用いられ、骨転移(疼

    痛緩和)や脳転移(症状の緩和)に高い効果も示しています。小細胞癌では抗癌剤、放射線の感受性が高いた

    めに用いられております。放射線の照射技術は向上しており照射範囲を限局して照射が可能で、以前と比較す

    ると周囲の組織へのダメージも少なくなっております。然しながら、肺は呼吸の都度動くため照射範囲は脳や

    乳房などに比較すると広めに設定しなければなりませんので、間質性肺炎などを起こす事もあります。その対

    策のために定位放射線治療は位置ズレを起こした時にはコンピューター制御で放射線を止めほぼ、癌細胞だけ

    を集中的に照射します。精度は3cmくらいの大きさの癌までは高い効果が認められる、とされております。

    放射線には副作用と呼ばれるものがあり、急性障害(治療中〜3ヶ月程度で起きる)と晩期障害数ヶ月〜数年

    後に起きる)があります。急性障害は治療後数週間で治るとされますが、それには放射線皮膚炎白血球減少

    、貧血、放射線食道炎放射線肺炎などがあります。晩期障害には放射線肺炎後の肺線維症や脊髄炎などがあ

    ります。





    
* 間質性肺炎/間質は肺胞を覆う薄い弾力のある膜と周囲の組織の事ですが、この間質に炎症を起こすと細胞

    やコラーゲンなどが増加するため肥厚します。そのためガス交換が出来なくなり、咳や呼吸困難を起こします

    。放射線や関節リウマチなどの病気、薬剤などで起こりますが原因不明のものもあります。間質性肺炎が治っ

    ても傷が残り間質が硬くなるために膨らみ難くなる状態は肺線維症といいます。


    
* 放射線皮膚炎/皮膚が赤くなる、痒くなるなどの後、黒ずみ皮がむけますが治療が終わるとやがて治ります。

    
* 白血球減少/風邪などの感染症に罹りやすくなるため、睡眠を充分にとり栄養バランスの取れた食事をします。

    
* 放射線食道炎/喉がヒリヒリしたり、飲食物が飲み込み難くなったりします。粘膜を保護する久留里や鎮痛

    薬を使う、柔らかいものを食べるなどの配慮をします。

    
* 放射線肺炎/咳が出るだけで治る場合も多い。発熱、呼吸困難などが起こる場合も有るのでステロイド剤を

    使う事や、細菌感染が起きると重症化するため早期に治すことが大切です。




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§11−5 肺癌(肺ガン・肺がん)/化学療法


    抗癌剤には代謝拮抗剤、白金製剤、アルキル化剤、植物アルカロイド、抗癌抗生物質、分子標的治療薬などが

    あります。肺癌ではホルモン療法などは用いられませんが、抗癌剤を用いる化学療法は採用されております。

    用いられる抗癌剤の殆どは細胞毒と呼ばれるもの(DNAや蛋白を変性させたり、細胞分裂を抑えて癌細胞を

    攻撃するもので、分子標的治療薬は癌の原因分子だけをターゲットにする新タイプの薬です。多くは進行癌の

    治療に使用されておりますが、術後補助療法(アジュバント療法)が、固形癌の種類により、再発を予防する

    目的で採用されております。

小細胞肺癌の場合は感受性が高いと表現され、非

小細胞肺癌は抗癌剤がよく効く癌とは表現されな

いが、V期以上の非小細胞肺癌では手術だけでは

根治はまず期待できないが、病期に応じて化学療

法や放射線療法と併用して用いられ、癌が縮小し

て手術可能になる事もある。内服抗癌剤でも臨床

試験の結果、一定の効果がみとめられているが、

特に非小細胞肺癌の腺癌T期で手術後テガフール

・ウラシルは配合剤を内服する事により、5年生

存率が改善された報告もある。内服剤の場合は自

宅で服用できるメリットがある。抗癌剤の使用法

としましては2種類以上の組み合わせで使用され

ることが多い。抗癌剤は両刃の剣といわれ正常細

胞にもダメージを与えます。そのため2種類以上

の抗癌剤を組み合わせて副作用を抑える多剤併用

療法が採用されます。


    抗癌剤は又、個人差がありますし、癌細胞に薬に対する耐性があれば効きにくくもなります。そのため薬剤感

    受性試験でどの抗癌剤が効果的かを調べる事もします。抗癌剤を用いる場合、通常はファーストライン化学療

    法(最も高い効果が得られるとされる処方選択)から入り、セカンド、サードという形で推移しますが、ファースト

    ラインで効果が得られた人は再発の際、セカンドライン化学療法でも抗癌剤の効果が期待できます。しかし、感

    受性の低い人は効果が期待できない場合があります。抗癌剤の場合の投与は連日投与する事は無く、一定の

    間隔をあけて投与されます。



    抗癌剤には感受性の高い癌、効かない癌も癌の種類によってはあります。小細胞癌非小細胞癌をご覧下さい。

    御参考に非小細胞癌治療法小細胞癌の標準的療法をご覧下さい。





     
§11−5−1 小細胞肺癌/化学療法/肺癌(肺ガン・肺がん)


     小細胞肺癌は進行の速い癌ですが、抗癌剤の感受性の高い癌でもあります。小細胞肺癌の場合は抗癌剤

     の投与により癌が無くなったり、縮小しても半数以上が再発します。完全寛解は治癒を意味していません。例

     え原発巣から癌が消えたとしても画像では確認できなかった微小な癌が成長して再発が表面化することが多

     々あります。それでも完全寛解は治癒の可能性も高くなるという事はいえます。小細胞肺癌の場合の3年生

     存率は限局型(小細胞肺癌の標準療法を御参考にご覧下さい。)で20〜40%、進展型だと10%で厳しい癌

     です。化学療法はシスプラチンを中心とした多剤併用療法が多々採用されます。PE療法PI療法CAV療法

     CE療法など様々な薬剤の組み合わせた(薬剤の頭文字をとったもの)療法や、療法同士を交代で採用する交

     代療法などがあります。小細胞肺癌の標準的な療法はPE療法・PE&CAV交代療法・PI療法です。体力の

     ない高齢者はCE療法が採用される事が多いようです。


     
§11−5−2 非小細胞肺癌/化学療法/肺癌(肺ガン・肺がん)

     非小細胞肺癌は抗癌剤の感受性の低い癌と言うわけではありませんが感受性の高い癌というわけでも有り

     ません。非小細胞肺癌はV期以上の進行状態ですと手術による根治はまず期待できません。病期に応じ化

     学療法、化学療法+放射線療法の併用療法が採用されます。この事により癌が縮小し手術が可能になるケー

     スもあります。よく採用される抗癌剤はシスプラチンイリノテカンドセタキセルパクリタキセルビノレルビン

     ゲムシタビン、などのいずれかを組み合わせる多剤併用療法などがあります。W期になりますと、患者さんの

     体力に応じてQOLの向上に役立つと判断されれば化学量単独や放射線との併用療法も採用されます。

     分子標的治療薬は効果の期待できる一部の人を除きサードライン以降に用いることが勧められているのが現状

     で、今後の化学的根拠の進展待ちという状況です。術後補助療法としましてTB期〜VA期の患者さんが対象

     ですが、抗癌剤の投与では手術だけの場合に比べますと5年生存率が11%強高いという報告もあります。T期

     全体でも2.5%上昇している事も合わせて報告されております。(3回/日、2年間の場合)




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§11−5−3 分子標的治療薬/化学療法/肺癌(肺ガン・肺がん)


     分子標的治療薬は他の抗癌剤で効果が無かった非小細胞肺癌にはゲフィチニブが一般的に用いられます。

     癌細胞の細胞膜にあるEGFR(上皮成長因子受容体)と言うタンパクがありゲフィチニブはEGFRの信号の伝達

     を阻止する薬です。ゲフィチニブは手術ができない進行癌や再発癌で抗癌剤で効果がない場合に採用されるもの

     です。腺癌、非喫煙者、女性に効果があるとされます。この錠剤は毎朝一錠効果のある限り服用し続けます。副作

     用としては間質性肺炎を含む急性肺障害(発熱、咳)、にきび、乾燥肌、ヒョウソ(化膿性爪囲炎)や下痢などです。

     日本で使用し始めた当初は副作用による肺障害で死亡する人が多く問題になりましたが、欧米での肺障害が問題

     とされていないことがあり、これは人種間格差ではないかとされています。現時点でもゲフィチニブの使用に関する

     是非論があります。 * ゲフィチニブGefitinib(商品名イレッサ)





    
§11−6 肺癌(肺ガン・肺がん)/光線力学的治療(PDT)


    肺門型肺癌に対して行う低侵襲の治療法です。PDT(photodynamic therapy)は低出力のレーザー光線を照

    射して癌を破壊します。静脈内に腫瘍親和性光感受性物質を注射し一定時間後に気管支内視鏡を挿入してレー

    ザー光線を照射します。PDTは光感受性物質がレーザーの照射を受けて光化学反応を起こさせて発生した活

    性酸素が癌を壊死させるという考え方の治療法です。レーザー照射後2〜3日してから壊死した癌を気管支内

    視鏡で取り出します。治療後一ヶ月で気管支内視鏡で検査し癌細胞が除去できているか否かを確認し、3〜4

    ヶ月の定期検査で再発チェックをします。体力の無い人にも適用でき非小細胞癌、特に扁平上皮癌で気管支粘

    膜の表面に留まっている1cm以内の癌であれば治癒率は95%ということです。近年では主気管支、気管に及

    ぶ進行癌で片肺全摘に適応するようなケースでもまずPDTを実施して癌を縮小させて、肺葉摘除術での対応

    にできる事もあります。癌組織と正常細胞の境界がはっきりしている事や、肺門型肺癌が治療対象です。PD

    T治療後は光感受性物質を投与する関係から、紫外線に当たると酷い火傷を起こしますので充分な紫外線対策

    が求められます。更にクロレラ加工品、ドクダミ、セロリなどを沢山摂取すると光に対する感受性が高くなる

    ので、摂取は控えます。治療の出来る医療機関は限られていますが、入院期間も一週間程度で保険も適用され

    ます。






    
§12 肺癌(肺ガン・肺がん)/ステージ(病期)


    
§12−1 肺癌(肺ガン・肺がん)/TNM分類


    T(tumor)/原発腫瘍の進展度.N(lymph node)/リンパ節転移.M(metastasis)/遠隔転移の3つの要素で肺癌の病

    期を分類する国際的方法です。この病期診断は治療方針、予後の予測をするうえで極めて重要な指針です。





    
§12−1−1 T(tumor)/原発腫瘍の進展度/TNM分類/肺癌(肺ガン・肺がん)


Tx 細胞診で癌細胞が検出されるが、原発巣不明(原発腫瘍の評価が不可能か、または画像上又は、気管支鏡的には観察できないが痰又は気管支分泌物中に悪性細胞が存在することで腫瘍の存在が分かる時)
T0 原発巣を認めない
Tis 上皮内癌
T1 腫瘍の最大径が3cm以下で、(健常肺組織又は、肺胸膜に囲まれており)浸潤が臓側胸膜や主気管支に及んでいない。*1   主気管支に浸潤を認めても、気管支内に限局し、表層浸潤型である。(気管支鏡敵に癌浸潤が葉気管支より中枢に及ばないもの)
T2 腫瘍の最大径が3cmを超える。臓側胸膜に浸潤を認める。主気管支に浸潤があるが、気管支分岐部から2p以上離れている。無気肺あるいは閉塞性肺炎があるが、片肺全野に及ばない。臓側胸膜に浸潤する腫瘍
T3 腫瘍の大きさに関係なく、直接浸潤が胸壁、横隔膜、縦隔胸膜、臓側胸膜に及ぶ。または
主気管支への浸潤が気管支分岐部から2p以内にあるが気管支分岐部に及んでいない。または
無気肺あるいは閉塞性肺炎が片肺全体に及んでいる。
T4 腫瘍の大きさに関係なく直接浸潤が縦隔、心臓、大血管、気管、食道、背骨の椎体、気管支分岐部に及ぶ。同一肺葉に散在する腫瘍結節。悪性胸水がある腫瘍。*2


     *1 大きさに無関係に腫瘍の浸潤が気管支内に限局しているまれな表層浸潤型のもので、腫瘍が主気管支に及ぶ

     ものでもT1とする。



     *2 肺癌と関係のある胸水の多くは腫瘍によるものである。しかし、中には何回にも及ぶ細胞診検査にて陰性の例も

     ある。非血性で非滲出性である。この様な場合は胸水が腫瘍と関係ないこと、胸水の性状を臨床的判断で決め、

     その病期から除外し、T1、T2又はT3とする。




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§12−1−2 N(lymph node)/リンパ節転移/TNM分類/肺癌(肺ガン・肺がん)


                                                -肺周辺リンパ節位置の概要-

NX 所属リンパ節の評価が不可能
N0 リンパ節に転移していない。
N1 癌が発生した側の肺門リンパ節や肺内リンパ節への転移や浸潤を認める。
N2 癌が発生した側の縦隔リンパ節への転移がある。
N3 癌が発生した側と反対側の縦隔リンパ節や肺門リンパ節、鎖骨上窩リンパ節、前斜角筋リンパ節への転移が認められる。


    
* センチネルリンパ節

    乳癌のセンチネル(見張り)リンパ節はよく知られる様になっておりますが、肺癌のセンチネルリンパ節は

    肺の中や周囲の血管とリンパ節が網の目のように複雑に索合しておりますのでその存在位置を特定するのが

    難しく推測では肺の中にあると考えられておりますがその様なわけで、現時点におきましてはセンチネルリ

    ンパ節生検は行われておりません。癌のリンパ節転移はルートがあると考えられており最初にセンチネルリ

    ンパ節を経由するため、センチネルリンパ節さえ特定できればそのリンパ節(1〜2個)を生検する事によ

    り傍、系列リンパ節を郭清するか否かを判断できます。





    
§12−1−3 M(metastasis)/遠隔転移/TNM分類/肺癌(肺ガン・肺がん)


MX 遠隔転移の評価が不可能
M0 遠隔転移していない。
M1 他の臓器への転移があるか、2箇所以上の肺葉に癌を認める。





    
§12−1−4 病期分類/TNM分類/(肺ガン・肺がん)

潜伏期 Tx N0 M0
0期 Tis N0 M0
TA期 T1 N0 M0
TB期 T2 N0 M0
UA期 T1 N1 M0
UB期 T2 N1 M0
T3 N0 M0
VA期 T1 N2 M0
T2 N2 M0
T3 N1、N2 M0
VB期  Tに関係なく N3 M0
T4 Nに関係なく M0
W期 T、Nに関係なく M1
                                                           
          
by UICC





    
§12−2 病期分類/日本肺癌学会等/肺癌(肺ガン・肺がん)


          -ステージ(病期)非小細胞肺癌例-

肺癌のステージは原発腫瘍の広がりや、リン

パ節転移の状況、遠隔転移(他臓器等への転

移)の有無などにより細かく国際的な取り決

めがあります。この取り決めに従った病気分

類は既に御説明いたしましたTNM分類と呼

ばれておりますが、進行の早い小細胞癌には

当てはめられず、非小細胞癌に適用されるも

のです。(下表は日本肺癌学会・日本呼吸器

外科学会合同委員会大規模調査によります。)

非小細胞肺癌
5年生存率(%)臨床病期
1994 1999
TA 72.1 77.0
TB 49.9 60.1
UA 48.7 53.8
UB 40.6 43.6
VA 35.8 38.0
VB 28.0 33.6
W 20.8 27.0

       * 組織型分類も御参考にご覧下さい

               -肺胞模式図-

小細胞癌は早期限局型(非小細胞癌のT期相当)、限局型(非小細胞癌のU、V期で悪性胸水確認できない

もの)、進展型(非小細胞VBで悪性胸水を確認、W期相当)の3段階に区分されております。限局型は肺癌が

片肺、縦隔リンパ節、癌が認められる側の鎖骨上リンパ節の範囲に留まっているものをいいます。


全国の癌治療の中心的な病院が加盟する「全国癌センター協議会」では、胃癌、肺癌、乳癌、大腸癌の治療5年

後の生存率を発表しました。それによりますと肺癌は千葉県癌センター(44、5%)、県立癌センター新潟病院(42、

4%)、大阪府立成人病センター(55、5%)、宮城県立癌センター(30、0%)、栃木県立癌センター(43、6%)、

神奈川県立癌センター(36、4%)、四国癌センター(45、9%)、兵庫県立癌センター(38、7%)、北海道癌セン

ター(27、8%)、国立癌センター中央病院(*65、7%)となっております。

(受療者のステージなどは分かりませんので、一概にこの数値の評価はできません。*は手術症例のみ)







   
§13 肺周辺の構造


                  -縦隔図解-

肺は胸郭(胸腔)という背骨と肋骨に囲ま

れた部分に左右一つづつ納まっております

。肺と肺の間は横隔膜の横隔に対応する言

葉として縦隔といわれ、心臓や気管、食道

、大血管など重要な器管が納まっておりま

す。肺には切れ込みが右肺には3つ、左肺

には2つあります。それに伴って右は上葉

、中葉、下葉に左は上葉、下葉と呼ばれて

おります。

気管支は縦隔から左右に別れ、夫々の肺に入りますがさらに枝分かれを繰り返して終末部には呼吸細気管

支となり、その先は肺胞管から肺胞という半球状のブドウの房のような外観の器管に到達します。






     * 
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