甲状腺癌(甲状腺ガン)・症状・原因・検査・療法

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甲状腺癌(甲状腺ガン・甲状腺がん)の種類・症状・原因・検査・療法



     
§1 甲状腺癌(甲状腺ガン・甲状腺がん)


     
日本人は乳頭癌(全甲状腺癌の80%)が多くドイツ人は濾胞癌が多いといわれておりますが、これは日本人は

     海藻類を多く摂取しますがドイツ人では海藻類を食べない為と考えられております。また、ヨードを含んだ食塩を

     使わない国でも濾胞癌が多く、乳頭癌が少ないといわれております。ヨード欠乏地域は沿岸地域から離れた内陸

     部に多く(土壌中にもヨードが枯渇している)、中国、中南米、アフリカなどで多数の人々が該当します。甲状腺癌

     には、甲状腺濾胞細胞を起源とする乳頭癌、濾胞癌と、傍濾胞細胞を起源とする髄様癌がありますが、女性に

     圧倒的に多い状況です。乳頭癌は一般的に悪性度が低いと考えられております。甲状腺に出来る癌は生命を脅

     かす危険度の高い癌と非危険癌の区別が、できてきておりますが、乳頭癌、濾胞癌、髄様癌は夫々、危険癌と

     非危険癌があります。甲状腺の良性腫瘍は腺腫と腺腫様甲状腺腫に分けられ、悪性腫瘍は癌とリンパ腫に分け

     られます。

     予後を決定する因子としては、年齢、性別、原発巣の大きさ、肉眼的転移の有無といわれ、未分化癌は進展が

     早いが、他の甲状腺癌は増殖が遅く、手術で適切に切除できれば、甲状腺癌そのものが死因になるような事は

     少ないといわれます。






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     §2 甲状腺癌(甲状腺ガン・甲状腺がん)の種類


頻度 好発年齢 甲状腺腫 発育速度 転移、浸潤 予後 補足
乳頭癌 80〜85% 30〜50歳・若年者もある 硬い結節表面凸凹 遅い 早期から頸部リンパ節に転移、血行転移は非常にまれ、周囲組織への浸潤傾向がある。 良好
10年生存率90%以上
(90%)
吸引細胞診が有用、
放射線被曝で誘発
濾胞癌 10〜15% 30〜50歳・中年に多い 比較的軟らかい結節 遅い 血行性に肺、骨に転移 比較的良好10年生存率80〜90%(80%) 良性との鑑別が難しい
髄様癌 1〜3% 30〜50歳・幼少もある 硬い結節両葉に浸潤 遅い 早期から頸部リンパ節に転移 比較的良好
10年生存率80〜90%
(70%)
ret遺伝子異常*MENU型の部分症、家族性
未分化癌 2〜3%(1〜2%) 40歳以上高齢者に多い 硬い結節周辺部と癒着 極めて速い 局所での浸潤強い
全身への転移
極めて不良
殆どが1年以内に死亡
分化癌からの悪性化
悪性リンパ腫 1〜3% 40歳以上高齢者に多い 瀰漫せい甲状腺腫に硬い結節 速い 頸部リンパ節、上縦隔への転移 比較的不良
10年生存率60%
(60〜70%)
橋本病との関連

        表は日本国内のでの状況   *MEN/多発性内分泌腺腫瘍           
( ) 別資料です。




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§3 甲状腺癌(甲状腺ガン・甲状腺がん)の症状


     甲状腺癌は症状は希薄で、甲状腺癌が極めて大きい場合には喉の圧迫感を感ずる事がある程度です。日本では

     非危険性の甲状腺癌が多いのですが、その発生の率は低くはありません。30〜50歳以上に比較的多い癌です

     が、女性に多いのが特徴で、男性1に対して女性は3〜5です。但し危険癌では男性、女性ほぼ同率であり、

     甲状腺にしこりが感じられる場合には、注意しなければなりません。即刻受診しましょう。しこりは通常自分で

     気づくのは直径が3〜4p位といわれています。医師に発見されるのは、風邪などをひいて、たまたま受診して、

     触診で発見される程度です。医師の触診では1cm程度のものまでは腫瘤の検出が出来るようです。
            -甲状腺癌模式図-
首のリンパ節(側頸部、鎖骨上窩、顎下

部など)に転移したものを、自分で気づく

場合もあります。危険癌はしこりの大きさ

が自分で気づくほど大きく、半年以内にそ

の大きさを増します。


その様な場合は、時に近くにある反回神経

(発声関連神経)に浸潤して、声が嗄れる

、水やお茶を飲む時にもむせたりします。

更に強い浸潤になると、血痰、呼吸困難、食物が飲み込み難いなどの症状も出ます。食欲が減ったり、

体重減少は通常はみられません(まれに特殊な甲状腺癌ではあります)。











     
§4 甲状腺癌(甲状腺ガン・甲状腺がん)の原因


     大半の甲状腺癌の原因は不明ですが、判明しているものもあります。幼少期の放射線被曝(頸部に放射線照射に

     よる治療を受けた人など)により、甲状腺の良性、及び悪性腫瘍が増加する事が知られております。治療後10

     〜30年経過して、甲状腺に癌が出来る人は少なく有りません。その場合には副甲状腺腫瘍の可能性もあります。

     また、ヨード欠乏地域の国ではやはり、甲状腺癌(腺腫様甲状腺、濾胞腺腫)が発生し易いことが知られており

     ますが、わが国では殆ど該当しないようです。甲状腺癌の髄様癌は遺伝体質の家系があり、これも発生要因の

     一つです。この場合には副腎に褐色細胞腫が同時に出来るケースも多いとされます。






     
§5 甲状腺癌(甲状腺ガン・甲状腺がん)の検査


     甲状腺癌は触診が非常に大切で、首の触診だけで8割がた甲状腺癌の疑いを感じる事が出来るとされております。

     時に、甲状腺癌と甲状腺炎、甲状腺良性腫瘍の鑑別が難しいとされますが、腫瘤の硬さ、境界の鮮明さ、大きさの
    
変化、局所のリンパ節腫張などの重要な情報

を得る事ができますし、超音波検査、穿刺吸

引細胞診で全体の95%の甲状腺癌の診断が

なされるとされます。
但し、濾胞癌に付いて

は、良性腫瘍との鑑別が上記の何れの方法で

も 難しい場合がある、とされております。

超音波検査では嚢胞性、充実性、腫瘤内部の

均一性、石灰化像、辺縁の所見が得られるた

め、この情報で有る程度、良性、悪性の判断

がつけられます。(例/被膜が不整であり、粗

であり、石灰化があれば乳頭腺腫の疑い)





     確定診断を得るためには穿刺吸引細胞診による(結節性病変の)事が、求められます。これは非常に重要な検査で、

     悪性度の判定が出来、乳頭腺癌の診断は容易につけられます。穿刺吸引細胞診の検査の結果、2〜3(1〜2)%

     の未分化癌を除いて、手術が第一選択肢になります。(ただし、濾胞癌では穿刺吸引細胞診での確定診断が難しい

     場合が多く、疑わしい場合には手術が勧められる事があります。1cm弱の腫瘍の場合には、手術を急がず、経過観察

     を勧めるケースも増えてきております。




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§5−1 画像診断/甲状腺癌(甲状腺ガン・甲状腺がん)


     CT、MRIは甲状腺癌と周囲の組織への影響(浸潤)などを観察するのには役立つが、腫瘍の良性、悪性の判定には

     役立つ事はあまりありません。シンチグラフィーの場合には腫瘍の広がり、気管、食道など転移の状況の鑑別には

     有効とされておりますが、やはり、腫瘍の良性、悪性の判定には殆ど役に立ちません。





     
§5−2 腫瘍マーカー/甲状腺癌(甲状腺ガン・甲状腺がん)


     甲状腺癌の髄様癌では、血中CEAとカルシトニンの濃度が高く出ます。家族性の髄様癌の検査に役立ちます。甲状

     腺癌の人は通常は甲状腺機能は正常ですが、まれには腫瘍がホルモン産生能を持つ場合があります(プランマー

     病、中毒性多結節.腫)。この場合には、甲状腺機能が亢進する事があります。サイログロブリンは良性、

     悪性の鑑別は出来ませんが、甲状腺全摘術後の癌の再発や、進展を確認できるマーカーの役割を果たせます。




     
関連検査値・基準値/甲状腺癌(甲状腺ガン・甲状腺がん)


     甲状腺ペルオキシダーゼ






     
§6 療法/甲状腺癌(甲状腺ガン・甲状腺がん)


     甲状腺癌はそれぞれの癌の種類により、特性があります。非危険乳頭癌ならば、大方手術による治癒の確率が、

     高いと考えて良いとされ、危険乳頭癌であれば、かなりの手術をしても肺や骨に転移を起こす事も少なくあり

     ません。濾胞癌では、甲状腺全的術後、放射線ヨードのシンチグラム検査において確認できる程度の癌であれば、

     放射線ヨードの服用で治るとされますが、眼で視認できるほどの大きな転移が確認されると、予後は悪いといえ

     ます。髄様癌では甲状腺の周りのリンパ節への転移の程度と予後の悪さは比例するといわれております。未分化

     癌は大半の方が1年以内に死亡し、悪性リンパ腫の場合には、10年生存率は60〜70%と考えられております。







     
§6−1 乳頭癌療法/甲状腺癌(甲状腺ガン・甲状腺がん)


     乳頭癌は周辺リンパ節へ転移し易いが、血行性の遠隔転移がすくなく、甲状腺内、気管に浸潤する事もあります。


     1cm以下であれば、緊急を要するという様な事ではなく、場合によれば、6ヶ月ごとの検診で大きくなると判断

     されるようであれば、手術するという事もありえます。
非危険乳頭癌でも1cm以上であれば、甲状腺の1

/2or2/3の切除をします。リンパ節が腫脹して

いるようであれば、同時にリンパ節郭清をします

。癌が甲状腺の中に広がっているようであれば、

甲状腺の全摘術を行います。手術合併症として反

回神経麻痺(嗄声)、上皮体機能低下(血中カル

シウム濃度低下)などが起きないような特殊な縫

合を行います。乳頭癌でも危険癌の場合には、気

管、神経に浸潤している場合には、気管、神経も

全て切除しますが、多くの場合には肺転移を起こ

しており、この場合には化学療法や放射線療法を

併用します。増殖は一般的に遅いとされ、根治手

術が可能なことが多く、急速な腫瘍の増大はまれ

です。



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§6−2 濾胞癌療法/甲状腺癌(甲状腺ガン・甲状腺がん)


     危険癌は肺や骨に転移を起こす性質がありますので、疑いがあれば甲状腺全摘し、正常部分までも摘除します。

     術後1ヶ月を経過したら、ヨードによる放射線検査(シンチグラフィー)を実施します。転移があれば、集積するため

     に、明瞭に陰影が得られますので、転移の確認ができます。その場合には再入院して、放射線ヨードを100ミリ

     キュリーくらい服用し、転移部位を治療します。甲状腺癌の独特の治療法になります。但し、超音波検査や穿刺

     吸引細胞診でも、腺腫と明確に区別する事が困難で、手術後の組織検査で確定診断される事も多い様です。予後

     は男性の方が、女性よりやや悪く、若年者より高齢者の方が悪いとされます。





     
§6−3 髄様癌療法/甲状腺癌(甲状腺ガン・甲状腺がん)


     髄様癌は手術療法になります。家族性髄様癌は甲状腺両側腺葉に起きるために、甲状腺の両葉を全摘します。

     カルシトニンを産生する傍濾胞細胞から生じる悪性腫瘍です。甲状腺髄様癌はカルシトニン、CEA(癌胎児性

     抗原)を産生するため診断に有用です。髄様癌を発見した場合は、必ず褐色細胞腫や、副甲状腺機能亢進症の

     合併有無を調べます。髄様癌は散発性と家族性が有りますが、家族性髄様癌は両葉に発生してくるため、甲状腺

     全摘術を行います。





     
§6−4 未分化癌・悪性リンパ腫療法/甲状腺癌(甲状腺ガン・甲状腺がん)


     放射線と化学療法で治療する事が主体ですが、ここの人それぞれの特性に合う治療法の選択になります。

     未分化癌は増殖が非常に早い事は冒頭にお知らせしましたが、予後も不良で、診断時に既に手遅れの状態が多い

     厳しい癌です。高齢者に多く嗄声や呼吸障害があり、筋肉、気管、食道、反回神経などに早期に浸潤します。

     外科・放射線・化学療法を強力に施しても予後は悪いとされております。未分化癌は、分化癌が未分化癌に移行

     すると考えられております。悪性リンパ腫の場合は、非ホジキンB細胞リンパ腫です。甲状腺に浸潤したリンパ球

     を母地として、発生するものと考えられております。こちらもやはり、高齢者に多く慢性甲状腺炎を母体とするため、

     慢性甲状腺炎罹患者で、甲状腺が急速に拡大するようなケースに直面した場合には、早急に受診しなければなり

     ません。こちらの治療の場合には放射線療法と化学療法の併用が主流ですが、放射線療法は極めて有効な例が

     有るとされます。



     
* 甲状腺癌は子供の場合には放射能の被爆により起こすことが知られていますが、大人の場合には、成長ホルモ

      ンが多い場合、体は大きくなりますが、甲状腺癌も起き易くなるのではないかとの研究報告が、日本癌学会で発表

      されています。大人の甲状腺癌患者さんと189人とそうでない人を比較しての比較研究の結果で、体重が重く、身

      長も高い人ほど多い傾向があり、痩せて背も低い人の2倍以上あるというものです。







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