胃癌(胃ガン)・症状・検査・療法

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胃癌・構造・転移・症状・検査・療法・ヘリコバクター・ピロリ・分類



     
概要/胃癌(胃ガン・胃がん)


     胃癌は他の癌に比して、離れた臓器には転移し難い癌とされます。ですが、早期でもリンパ節には転移し易く、

     放置しますとリンパ節から他のリンパ節に転移が進み、最終的には血流から他の臓器に血行性転移をします。

     胃癌が成長して、胃壁を突き破れば、腹腔内に播種性転移もします。腹腔には近傍臓器もあり、臓器を包む膜

     にも転移(腹膜播種)したり、胃を通過した血液が、肝臓にも転移をきたします。胃癌は、発見時に進行していれ

     ば、肝臓や腹膜で再発する事もあります。






     
§1 胃癌(胃ガン・胃がん)


     胃癌は日本人に特に多発する癌です。胃癌は男性に多く好発年齢も男性では60歳代、女性で50歳代といわれて

     おります。粘膜に発生する胃癌は粘膜から時間と共に粘膜下層、筋層、漿膜に進行してゆきます。胃癌は早期胃癌

     と進行性胃癌に分けることも出来ます。早期胃癌とは癌細胞が胃粘膜下層までに留まっているものをいい、進行

     性胃癌は固有筋層より深く浸潤したものをいいます。(胃癌進展度分類模式図もご覧下さい)。早期胃癌はその形態

     から隆起型(T型)、表面型(U型)、陥凹型(V型)に分けられ表面型はUa(表面隆起型)、Ub(表面平坦型)、Uc

     (表面陥凹型)に分類する事ができます。(早期胃癌分類模式図もご覧下さい)。又、進行癌につきましては1型(胃

     の内側に隆起している)、2型(潰瘍を作るもので正常組織との境界が明瞭なもの)、3型(潰瘍形成型で、境界の

     不明瞭なもの)、4型(隆起や潰瘍が無く胃壁を広く進展しているもの)に分類されます。1型と2型は限局型であり、

     3型と4型は浸潤型であり、スキルス胃癌は4型に該当します。(進行性胃癌の分類模式図も御参考にご覧下さい)

     早期胃癌の予後は極めてよく、5年生存率も90%以上です。漿膜下層、固有筋層に浸潤した癌でも70〜80%

     程度と良好な結果を示していますが、治療切除できなかった場合の5年生存率は2〜3%程度しかありません。







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§2 胃壁の構造


           -胃壁組織像模式図-
胃壁は内側より表層粘膜細胞(腺窩上皮

)、腺頸部、胃底腺細胞、粘膜筋板、粘

膜下層、固有筋層、漿膜層からなり、胃

癌は粘膜層(表層粘膜細胞〜粘膜筋板)

に発生し粘膜下層、固有筋層、漿膜へと

進行して行きます。胃癌の多くは上皮性

であり、胃癌の浸潤度に応じて早期胃癌、

進行胃癌に分類されます。早期胃癌とい

う病気は「癌の浸潤度が粘膜内か粘膜下

層に留まるもので、リンパ節転移は考慮

に入れない」とあります。








§3 胃癌(胃ガン・胃がん)の転移



胃癌は他の癌に比べますと離れた臓器に転移し難い癌ですが、リンパ節には転移し易く、放置すると他の

リンパ節に転移が進み最終的には血流に乗り他の臓器にも転移します。リンパ行性転移は癌細胞がリン

パ管内に侵入してリンパ系に広がるもので、血行性転移は血管内に癌細胞が入るもの、大きく成長する

と、胃壁を突き破り癌細胞が漿膜層から腹腔内に侵入してしまう腹膜転移、癌細胞が腹腔内に種を播いた

ように広がる播種性転移もあり、治療も手術療法だけでは困難になります。胃を通過した血液は肝臓に

集まりますので、胃癌が進行し、癌細胞が血流に乗り肝臓に転移する事もあります。播種性転移では、あ

る病理医が迅速診断時に、良性、悪性の判断に迷う事例がありましたが、その旨を外科医に伝えたところ

、患部の確認を指示され、その結果、患者さんのお腹の中はジャガイモのような結節で一杯であったと記

述されております。胃癌が腹腔内に播種している悪性筋肉腫であったそうです。



胃癌から他臓器への転移率 他臓器癌から胃への転移率
11、3%
肝臓 15、0%
膵臓 08、6%
腹膜 11、9%
骨・骨髄 05、0%
膵癌 17、3%
肺癌 14、2%
リンパ腫 10、6%
白血病 09、2%
肝癌 08、0%
結腸癌(大腸癌) 04、8%




     * 胃癌が転移・再発した場合は通常、化学療法を選択します。使用される抗癌剤はTS−1、TS−1+シスプラチン

     TS−1+イリノテカン、イリノテカン、シスプラチン、ドセタキセルパクリタキセル



     * 胃癌が転移・再発した場合にとられる緩和療法としましては、腹膜播腫のために、腹水が起こり易く、その

     場合には利尿薬をしようしたり、尿管が圧迫されていれば腎臓までカテーテルを通します。肝臓から胆嚢や消化

     器へと胆汁を送る胆管が狭窄した場合には、胆汁を体外に排泄させる方法もとります。栄養を口から摂れない

     場合には、IVH(中心静脈栄養法)を選択します。



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§4 胃癌(胃ガン・胃がん)の症状


     腹痛が最も多い症状です。胃癌の場合特有の症状というものは無く、他の胃腸の病気の症状と変わらない症状で

     腹痛、胃部不快感、食欲不振などです。食べ物の好みが変わる事があります。吐き気、嘔吐、胸焼け、ゲップ、

     下血などの症状を確認することもあります。ですが、症状が希薄で集団検診や、人間ドッグで初めて胃癌が発見

     される事も多く、早期発見に検診が大きな決め手になっている事も御記憶下さい。

            -胃癌自覚症状-
胃癌は早期胃癌と進行胃癌ではその症状の発

現にはわずかに異なるところが有ります。早

期胃癌、進行胃癌ともに上腹部痛が多くを占

めています。進行胃癌では特異的に体重減少

が40%と多数を占めている事がわかります

。然しながら全体的には特別な症状というよ

りも胃腸の調子が悪いなという症状です。胃

癌が進行しますと腹部を触診すると硬いしこ

り(腫瘤)を感じる様になる場合もあります

。この頃になりますと、食欲不振がはなはだ

しくなり、衰弱も全身に至るようになり、腹

水や痛みも激しく、嘔吐や吐血も確認できる

事もあります。





      -胃癌の部位別発生率-          -胃癌進展度分類模式図-






     
§5 早期胃癌(胃ガン・胃がん)の分類

          -早期胃癌分類模式図-
早期胃癌のT型は隆起型、U型は表面型、V型は

陥凹型ですがU型は更に各a.b.cに分けられてお

ります。早期胃癌の段階で発見する事が出来れば

高い確率で治癒が可能です。日本の胃癌の臨床と

研究に付いては世界をリードしているといわれて

おります。






     
§6 進行性胃癌(胃ガン・胃がん)の分類

                      -進行性胃癌の分類模式図-

進行性胃癌は1型は胃の内側に隆起しているもので、2型は潰瘍を作り、3型は潰瘍形成型ではあります

が、浸潤性で境界が不明瞭のものです。更に4型になりますとスキルス胃癌と呼ばれ、若年者に多く、境

界は不明瞭で進行が速く、悪性の癌で早期発見も難しい癌です。






     §7 胃癌(胃ガン・胃がん)とヘリコバクター・ピロリ菌との関わり


     胃癌(胃ガン)という病気や胃リンパ腫という病気の発生は、ヘリコバクター・ピロリ菌がかかわっている事も

     分かってきています。

     ヘリコバクター・ピロリ菌の感染者のうち、胃癌(胃ガン)を伴う事例は、一部にしか過ぎませんが、EMR(内視

     鏡的胃粘膜切除法)後、ヘリコバクター・ピロリ菌除菌で、異時多発胃癌(胃ガン)の増殖抑制やヘリコバクター・

     ピロリ菌感染陰性者には、8年間の経過観察で胃癌(胃ガン)発生が確認されなかった事からもヘリコバクター・

     ピロリ菌の胃癌(胃ガン)発生への関与は充分にあると、考えられています。

     ヘリコバクター・ピロリ菌に感染して胃粘膜に生じた炎症は、持続すると10〜20年後には腸上皮化生に変化する

     と考えられております。


     萎縮性胃炎が進行すると腸上皮化生という(胃粘膜が腸粘膜に似た状態に変性)状態になり、結果、胃癌(胃

     ガン)が発生し易い事が知られていますが、ヘリコバクター・ピロリ菌がその萎縮性胃炎に関与しているという

     事であるならば、胃癌(胃ガン)のリスクファクターと言え、実際ピロリ菌陽性の人は陰性者と比較した場合

     に、2、8〜6倍胃癌(胃ガン)になりやすいと言う結果が確認されております。ただし、ピロリ菌感染率の高い

     国で胃癌(胃ガン)が少ない国もあるためその因果、相関関係に付いては、いまだ詳細の形成メカニズムは

     解明されていないという事でもあります。






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胃癌(胃ガン・胃がん)




     
§8 胃癌(胃ガン・胃がん)の検査


     
§8−1 X線検査/胃癌


     殆どの方が御経験と思いますが、二重造影法と呼ばれる胃部X線検査では造影剤のバリウムを飲んだ後、発泡剤を

     飲んで膨らんだ胃壁の状態を投影確認する方法で、早期胃癌や進行性の胃癌も容易に診断できますし、病変や癌

     細胞の深達度なども推定できます。






     
§8−2 内視鏡検査/胃癌(胃ガン・胃がん


内視鏡検査ではファイバースコープを飲

み込み、直接胃の中を観察できる方法で

す。モニターで確認しますが、食道から

十二指腸まで確認できます。粘膜に色素

を吹き付けて色素により粘膜の状況を確

認することも可能です。内視鏡の管も従

来のものよりも、径が細くなり飲み込む

際の被験者の負担も少なくなってきてお

ります。その際病変が発見されれば、胃

粘膜の組織を採取して、組織顕微鏡検査

をし、診断を確定します。

日本の内視鏡技術レベルは世界一といわれ、内視鏡診断と生検による最終病理診断の一致率は、非常に

高いとされております。しかし、臨床医がこのケースは胃癌ではないという思い込みが有る場合もあります。

その様なケースでは癌細胞の存在を見逃す可能性もあります。これは病理医が臨床診断を信じすぎてしまう

場合にも、見逃すという点ではありえる事です。実際、その様な事例も紹介されております。潰瘍性の病変が、

なかなか治らず半年後に再検査(生検)で、胃癌が確定したケースもあるのです。診断の結果が全てである

という考えには、場合により、柔軟な判断力が、求められるかも知れません。その様なケースも有りうるのだ

という事も、頭の片隅に留めて置いてください。






     
§8−3 超音波検査/胃癌(胃ガン・胃がん


     胃癌と診断されれば、他臓器に転移していないかの確認検査に有力な方法で、妊婦にも使用される安全性の高い

     検査で苦痛もありません。内視鏡に超音波振動子を装着した超音波内視鏡検査もあり、胃癌の進行度判定や、

     手術方法の選択にも有効な手段となっております。






     
§8−4 腫瘍マーカー/胃癌(胃ガン・胃がん


     胃癌にはCEACA19-9、などが用いられます。







     
§9 胃癌(胃ガン・胃がん)関連検査値・基準値


     便性状便潜血α-フェトプロテイン


     (血便の色は出血の量や速度、消化管内の通過時間により異なるが、肉眼では一般的に、食道や胃、十二指腸

     など上部消化管の出血ほど黒っぽく、下部に行くほど暗赤色、鮮紅色になる。消化管出血は肉眼では確認でき

     ず、便潜血反応で確認できるケースもある。胃癌の場合は出血は通常少量、持続性であり、血便は肉眼で判明

     しない場合が多く、大量出血に至ればタール状便、吐血が確認されたりし、初期は出血が無い事も多い。)






     
§10 療法/胃癌(胃ガン・胃がん)


     
§10−1 外科療法/胃癌(胃がん)


     手術は浸潤の程度、リンパ節転移、他臓器に転移があるかなど検査の結果から状況を把握し、組織型も考慮した

     適切と思われる方法が選択されます。
            -胃癌切除例-
定型手術は胃の2/3を切除し、胃周囲リ

ンパ節を郭清します。(早期癌でもリンパ

節転移が確認されます)拡大手術は胃の全

摘術と共に広範囲のリンパ節郭清、周囲の

臓器の切除(大腸、膵臓、肝臓、十二指腸

、脾臓、横隔膜など)も行われます。縮小

手術はリンパ節の転移も無く、極小さな初

期早期癌に対しておこなわれます。リンパ

節郭清に付いては術前確認を慎重に行い、

リンパ節郭清の範囲が決められ、胃も一部

のみの切除となります。

リンパ節郭清につきましては、欧米と日本では考え方に少し差があるようです。進行癌は胃の全摘術、拡大

リンパ節郭清、他臓器合併切除など根治を目的として行われますが、これは胃の2/3以上の切除と、リンパ

節のD2郭清(第1群、第2群のリンパ節をとる事)を行うのが定型手術でしたが、欧米ではD2郭清はあまり

行われてきておりません。D1郭清に放射線治療をプラスした場合と、D2郭清とどちらがすぐれているのかは

結論が出ておりません。しかし、現在のアメリカ(NCCN)、イギリスのガイドラインではD2郭清をするべきとの

記載があるようです。





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§10−2 内視鏡による治療/胃癌胃ガン・胃がん


     
§10−2−1 早期胃癌(胃ガン・胃がん)/内視鏡による治療


     極めて初期、早期胃癌では内視鏡による切除が可能になります。高齢者や合併症により、手術に問題が有るよう

     な場合にも、早期胃癌であるならば適用される場合もあります。内視鏡的治療法としては癌を切除する方法(ポリ

     ペクトミー、ダブルスネアー・ポリペクトミー、ストリップバイオプシー、ERHSEなど)と癌を物理的に破壊する方法

     (光線力学的療法、レーザー療法、マイクロ波、高周波焼灼、ヒートプローブ、局所注射など)もあります。

     切除された組織は顕微鏡でリンパ節、血管を調べ転移の有無や、癌細胞の性質などの確認から癌の程度を確認

     することもできます。その際は胃の手術の必要性の判断も含めた選択も可能となります。


     *1極めて初期、早期胃癌/内視鏡的治療を考慮するのは手術が出来ないか、身体の状態が悪く手術適応が難し

     い場合です。極めて初期、早期胃癌とは粘膜癌、ポリープならば2p以下、糜爛状の癌なら1cm以下で潰瘍、

     瘢痕を伴わないもの、境界のはっきりした分化型の癌とされます。



     
* 内視鏡による摘出腫瘍;内視鏡治療で一度に摘出できる大きさには限度がある事が課題でした。内視鏡で腫

     瘍を少しずつ摘出する場合と、開腹により一度に広範囲に取り去った場合では、広範囲に取り去る方が再発率

     が非常に低いというデータがあります。この内視鏡治療に伴う問題をITナイフで広範囲に取り除く事が出来る様

     になっています。この場合、手術の翌々日には、おかゆを摂る事が出来、胃の粘膜は約1〜2ヶ月で再生すると

     紹介しております。 最初の2〜3週間、刺激物を避ければ日常生活を送る事が出来るとしています。進行癌でも

     転移が無い場合には有効であるとも紹介しています。






     
§10−2−2 進行性胃癌胃ガン・胃がん


     進行性胃癌で手術できないほどの進行を示すものや再発しているもので、食事の通過もままならない場合など

     にも、QOLの向上を確保するために内視鏡的な治療も試みられております。ブジー(胃の入口など狭くなったところ

     を押し広げるもの)、プロステーシス(人工食管)、ヤグレーザ(熱エネルギーで癌の塊を破壊し内腔を再開通させ

     る)などがありますが、危険も伴うため癌の状態や、患者の年齢、全身状態などを総合的に考慮して選択します。


     ある事例では80歳代後半の女性が、呼吸困難で亡くなりました。彼女は10年前に幽門部に出来た進行性胃癌

     と診断されていましたが、手術をせずに経過観察されていました。解剖の結果、確かに進行性の胃癌が存在しま

     したが、その大きさは10年前と変わらず、転移も無かった。食欲も無くなるまで、変わらずにあり、死因は肺炎で

     あった。胃癌とは無関係で、このように高齢者の場合には、進行した手遅れの胃癌であっても、増殖するとは限り

     ません。ちなみに100歳以上で亡くなる方の死因には、癌が少ない事は、病理解剖の結果からも明らかにされて

     おります。(一つの事例としてお受け留め下さい。)






     
§10−3 化学療法/胃癌胃ガン・胃がん


     胃癌は抗癌剤の効き難い癌です。しかし手術療法が不可能、手術の補助的手段、術後の再発防止などの補助療法、

     症状緩和として選択されています。抗癌剤は癌の種類、発生部位により特性もありますが、多くの抗癌剤が開発

     されており様々な選択肢も研究されております。術後補助療法の効果を正確に評価するためには、手術単独と

     術後補助化学療法を加えた場合で比較試験を行い、その結果を世界に提示して行くことも必要になります。

     1988年以来の比較試験では、肯定的な見解は出ておらず、胃癌の手術後の抗癌剤治療の意義ははっきりして

     いないとする見解があります。



     
関連抗癌剤/シクロホスファミドニムスチンチオテパシタラビン製剤フルオロウラシルテガフール

     テガフールウラシルTS-1ドキシフルリジンカルモフールエピルビシンドキソルビシンピラルビシン

     マイトマイシンアクラルビシンイリノテカンドセタキセル水和物パクリタキセルシスプラチンイリノテカン

     TS−1シスプラチンTS−1イリノテカン





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§11 胃癌(胃ガン・胃がん)の分類



     
§11−1 TNM分類/胃癌(胃ガン・胃がん)


T 原発腫瘍
 Tx 原発腫瘍の評価が不可能
 T0 原発腫瘍を認めない
 Tis 上皮内癌/粘膜固有層に浸潤していない上皮内癌
 T1 粘膜固有層又は粘膜下層に浸潤する腫瘍
 T2 固有筋層または漿膜下層に浸潤する腫瘍*1
 T3 漿膜(臓側腹膜)に浸潤しているが、隣接臓器にまで浸潤していない腫瘍*1.2.3
 T4 隣接臓器にまで浸潤している腫瘍*1.2.3
    注1 漿膜下浸潤腫瘍では、たとえ胃結腸間膜や胃肝間膜、あるいは大網や小網内を進展とした場合でも、それらの漿膜が浸潤されなければT2と分類する。これら胃間膜や大・小網の漿膜に浸潤が及んだ時には、T3と分類する。
    注2 胃の隣接臓器とは脾、横行結腸、肝、横隔膜、膵、腹壁、副腎、腎、小腸、後腹膜を指す。
    柱3 胃から十二指腸や食道に浸潤が及んでいる場合には、これらの中で最も深達度により分類する。
N 所属リンパ節
 Nx 所属リンパ節転移の評価が不可能
 N0 所属リンパ節転移なし
 N1 1〜6個の所属リンパ節転移
 N2 7〜15個の所属リンパ節転移
 N3 16個以上の所属リンパ節転移
M 遠隔転移
 Mx 遠隔転移の評価が不可能
 M0 遠隔転移なし
 M1 遠隔転移あり





     §11−2 病期分類/胃癌胃ガン・胃がん


病期分類
0期 Tis N0 M0
TA期 T1 N0 M0
TB期 T1 N1 M0
T2 N0 M0
U期 T1 N2 M0
T2 N1 M0
T3 N0 M0
VA期 T2 N2 M0
T3 N1 M0
T4 N0 M0
VB期 T3 N2 M0
W期 T4 N1、N2、N3 M0
T1、T2、T3 N3 M0
T、Nに関係なく M1
                                                                  BY UICC





     全国の癌治療の中心的な病院が加盟する「全国癌センター協議会」では、胃癌、肺癌、乳癌、大腸癌の治療5年後

     の生存率を発表しました。それによりますと胃癌は山形県立中央病院(73、8%)、県立癌センター新潟病院(76、

     0%)、大阪府立成人病センター(81、3%)、宮城県立癌センター(69、1%%)、福井県立病院(70、9%)、神奈川

     県立癌センター(76、4%)、四国癌センター(70、3%)、国立癌センター中央病院(84、1%)兵庫県立癌センター

     (76、1%)、栃木県立癌センター(71、4%)、千葉県癌センター(69、8%)、群馬県立癌センター(67、5%)、茨城

     県立中央病院(65、%)、呉医療センター(62、9%)となっております。

     (受療者のステージなどは分かりませんので、一概にこの数値の評価はできません。)





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     * スキルス胃癌/スキルス胃癌は20〜30歳代の女性に多い特殊な癌です。腫瘍や潰瘍をつくらないため、

     内視鏡検査では早期に発見のし難い癌で、進行の早い癌です。スキルス胃癌はしこりを作らないで胃全体に

     はびこるように広がります。粘膜の下に細かく潜り込み、這うように広がります。そのため胃は革袋のように

     なり、しかもしこりを作らないために、癌の境界線がはっきりしません。 内視鏡でもエックス線検査でも

     見つけ難い癌です。この胃癌は腹膜播種性といい、癌細胞が胃から腹膜に撒き散らした様に飛び火し、腹膜は

     ザラザラになり、腹水が溜まって癌性腹膜炎になります。胃の周囲のリンパ節から遠く離れたリンパ節に飛び火

     している事もまれではありません。原因はよく分かっておりませんが、潜伏期1〜3年以上にわたり緩やかに

     進み、その後に典型的なスキルス胃癌になります。潜伏期にこの癌を早期発見し、早期に治療する事が大切に

     なります。胃体部大彎を中心に粘膜のひだの多い胃底腺領域をしっかり観察し、陥凹した病変を見つけ出すこと

     がポイントです。バリウム、内視鏡検査では相当度の観察が必要で見逃しの確率の高いものといえます。








     参考資料



     * ヘリコバクターピロリ菌/ヘリコバクター・ピロリ(helicobacter pylori)

     感染後、胃内に長期間存在する。胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃ガン、胃リンパ腫などの発生と深く関与する。日本人

     の胃に存在するヘリコバクター・ピロリ菌は、すべてが強毒株と考えられています。この事は日本人の胃の疾患が

     欧米人に比べて多い原因となっている可能性があるという考えに示唆を与えています。その他、様々な病原因子が

     推測されていますが、疾患の発生や病態との関係を臨床的に証明できていません。


     ヘリコバクター・ピロリは1x4μm大のらせん状、あるいはS字状の微好気性グラム陰性菌で、片側に4〜6本

     の鞭毛をもつ感染経路の不明で、活発な運動性細菌です。経口感染は明確ですが、環境、食品などからは検出

     されず、糞口感染も考えにくい。乳幼児の唾液などからの口口感染が推測されています。


     侵入後、鞭毛を使い中性環境の粘膜層の深層に進み、胃粘膜上皮細胞に接着すると考えられています。現況では、

     ヘリコバクター・ピロリ菌は抗生物質で除菌治療が可能と、考えられており十二指腸潰瘍など消化性潰瘍の治療では

     まず最初に除菌治療が選択されています。
胃過形成ポリープも除菌治療で消失するという報告があります。

     (*
胃過形成ポリープ;良性の過形成変化に伴って胃にポリープが発生する。)

ただ、懸念されている事もあります。それ

は除菌治療をした人の3人に1人は何らか

の形で副作用が現れる事、(下痢、軟便、

味覚異常、舌炎、口内炎、腹痛、便秘、頭

痛、めまい、肝機能障害など)、逆流性食

道炎になる事、夫々の副作用には発生確率

には差が勿論あります。ですが一番の心配

事は耐性菌の出現です。この耐性菌の問題

に関しては、保険適用問題を含め、これか

らの最大の懸案事項となるのではないかと

思われます。耐性菌は対抗生物質及び対抗

原虫薬、夫々心配されています。除菌治療

の処方はプロトンポンプ阻害薬(PPI)

     、抗生物質、抗原虫薬を同時処方が主流で、プロトンポンプ阻害薬は胃酸の分泌を抑え強酸の胃の中で抗生物質、

     抗原虫薬の薬効を阻害されないように処方されます。

     抗生物質、抗原虫薬による除菌以外にも、ワクチンの開発も各国で進められております。遺伝子治療も研究さ

     れております。


     ヘリコバクター・ピロリ菌はウレアーゼ活性といい、(尿素を分解してアンモニアと二酸化炭素を生成する作用

     )胃液に含まれる尿素を分解してアンモニアを絶えず生成するためその部分の胃粘膜はアンモニアの刺激を受

     けて爛れます。そしてヘリコバクター・ピロリ菌は空胞化毒素という胃粘膜の細胞を空胞化させ、死滅させる毒

     素を作り出し、生体は免疫機能が働くために粘膜に炎症を起こします。その結果、活性酸素が出来、ウレアー

     ゼ活性で生成したアンモニアと反応して作られたモノクロラミンが更に細胞を障害します。ヘリコバクター・

     ピロリ菌の存在が様々な障害を引き起こします。



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ヘリコバクター・ピロリ菌の毒性

     ヘリコバクター・ピロリ菌は毒性の弱いものと強いものがあり、毒性の弱いものに感染した場合、慢性表層性

     胃炎を起こしますが殆ど自覚症状などはありません。毒性の強いものに感染した場合は萎縮性胃炎を起こしや

     すいものや(腸上皮化生を参照して下さい)、潰瘍を起こしやすい菌などがありその種類によって、感染後の

     罹患する病気も変わります。(日本人の胃に存在するヘリコバクター・ピロリ菌は、すべてが強毒株と考えら

     れています。)


     ヘリコバクター・ピロリ菌と慢性胃炎

     ヘリコバクター・ピロリ菌に初感染しても、定着が持続して慢性胃炎に移行する人は約半数で、残りは人の

     免疫反応で排除されると推測されています。猿を用いた感染実験でヘリコバクター・ピロリ菌接種後、1ヶ月

     過ぎると慢性活動性胃炎と呼ばれる状態になります。この時期は感染初期に観察された、出血、浮腫、糜爛は

     消失して、内視鏡所見は軽微となりますが、慢性胃炎状態は長期に持続すると、特に日本人では腸上皮化生

     ともなう、萎縮性胃炎に移行するのが一般的です。


     
ヘリコバクター・ピロリ菌と胃潰瘍、十二指腸潰瘍

     除菌治療による胃潰瘍、十二指腸潰瘍の再発が抑制できる事は、1980年代後半に証明されています。これは
 
     ヘリコバクター・ピロリ菌が、消化性潰瘍にかかわりが深い事を物語っています。


     
ヘリコバクター・ピロリ菌の感染の有無の検査(保険は適用されません。)

     スクリーニング;感染の有無を調べる篩い分け(@血清学的診断→簡便キットも開発されておりますA尿素呼気試験)

     確定診断;確定診断や治療法を決める検査(@迅速ウレアーゼ試験A培養法B病理組織学検査)


     
ヘリコバクター・ピロリ菌の遺伝子治療例

     ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療は菌が薬に対して耐性を獲得し、除菌率が年々低下している現状がある。

     そのため除菌に失敗続きの患者が、某H医大病院で個人の遺伝子情報を基に治療するオーダーメイド医療(テ

     ーラーメイド医療)を受け、患者に負荷の極めて少ない結果での治療に成功した。「新しい薬が開発されるま

     で待つしかない」といわれてあきらめかけていたのが、胃の痛みも一切ない形で治療を終了した。この方法は

     厚生労働省から混合診療が認められる「先進医療」として認定を受けた。患者の胃粘膜を内視鏡を使って採取

     し、患者の細胞とピロリ菌を遺伝子検査して患者の体質を調べた上で菌の耐性や薬の代謝速度の違いに応じて

     投与量、回数を変えるもので、現時点では症例は少ないものの、今まで除菌効果が無かった患者の100%の

     治療が成功しているという。(現時点での保険診療は適用されません。)





     胃癌の危険因子として上げられるものは特異要因として亜硝酸塩多量摂取(肉加工食品発色剤など)、萎縮性

     胃炎既往、悪性貧血既往、他の癌にも共通に上げられるものとして、喫煙、多量飲酒、塩分の多量摂取、油脂・

     肉類多食、焼肉・焼き魚多食、運動不足、肥満です。逆に
予防因子として野菜、果物、緑黄色野菜、豆・穀物・

     海藻・緑茶などです。


     -胃ガン(胃癌)予防10カ条-

     @ バランスの取れた栄養、A 毎日、食生活に変化を、B 暴食は避け、脂肪を控えめに、C 飲酒を過ごさ

     ない、D 禁煙、E ビタミン、繊維質を食品から適切に摂る、F 塩辛いものは控え、熱いものを気をつける、

     G 焦げは食べない、H カビを食べない、I 運動を適度に実践





     参考事例/胃癌


     胃癌病変の下部に、寄生虫アニサキスが発見されたという報告事例があります。これが何を意味するのかは、

     様々な憶測も呼ぶかも知れませんが、1cm程度の粘膜病変の直下に硬いしこりを認め、結果的に検査では表面

     部分の粘膜が生検で、病理診断されているため、粘膜下へ浸潤する胃癌が疑われ、胃亜全摘術が行われました。

     アニサキスはイルカに寄生する回虫の仲間で、イカやサバなどの魚類に寄生しています。生でこれらの海産物

     を食べる事により、ケースによっては、胃の壁の中に入り込んでしまい、問題を起こすことがあります。








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