肝癌(肝臓癌)・症状・検査・治療

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肝癌(肝臓癌)・症状・原因・検査・転移性肝癌・治療・転移・再発



     
概要/肝癌(肝臓癌)


     肝臓癌の原因の殆どは、ウィルスが原因です。 感染経路も特定できていますが、その感染に気づいていない

     人が多く、感染に気づいていれば、癌化も防げる事もあります。   B型肝炎は輸血や医療事故、血液製剤、

     母子感染、.(唾液、.)などが有り、感染者との同居はワクチン接種をします。C型肝炎は輸血や医療

     事故、血液製剤、や母子感染もあります。日常生活では血液感染に注意します。肝癌はB・C型肝炎に罹患し、

     慢性肝炎に移行し、肝硬変、肝癌(肝臓癌)に、時間をかけて移行します。C型肝炎の場合はその70%は慢性

     肝炎に移行し、更に、慢性肝炎の40%以上が肝硬変になるとする記述もあります。その結果、C型肝炎による

     肝硬変の半数以上は肝癌に進行するとされております。慢性肝炎が長引くほど、肝癌(肝臓癌)発病率は高く

     なるとされます。B型肝炎の場合は、慢性肝炎が持続する人の30%は肝硬変に移行し、その30%が肝癌(肝

     臓癌)になるとされ、B型肝炎は、肝硬変を経ずに、肝癌(肝臓癌)になる場合もあります。再生力の強いとされ

     る肝臓は、切除しても再生し、回復を期待できる臓器ですが、肝硬変、肝不全などで、再生を繰り返して結節化

     すると、再生能力が無くなってしまいます。再生能力を失えば、肝臓は線維化し肝硬変になります。



     
* 近年の別資料では、C型肝炎を発症すると約70%は慢性化し、20〜30年経過すると 10〜15%が肝硬変

     に移行し、その20〜25%が肝細胞癌になると予測されるとしております。 (一概に同じテーブルで評価する事

     は、難しいかも知れませんが、 こちらのデータでは、全体的に良い方向性での評価に傾斜している様には感じ

     られます。)





     
§1 肝癌(肝臓癌)


     
日本での肝癌(肝臓癌)の死亡率は上位にあり、依然増加の傾向の癌です。腸から吸収された物質はすべて、

     血液を介して肝臓を通過し、様々な酵素により代謝されます。更に不要なものの解毒や蛋白質の合成、栄養貯蔵、

     消化液分泌などの重要な機能を担う臓器です。肝癌(肝臓癌)は原発性肝癌と転移性肝癌に大別され原発性肝癌

     の95%は肝細胞癌で、その中の95%がウィルス性の肝炎由来(HBV10%/20%、HCV85%/80%)です。

     C型肝炎ウィルス(HCV)は肝細胞壊死を繰り返しながら、慢性肝炎を経て肝硬変にまで移行し肝癌(肝臓癌)に

     至ります。肝炎ウィルスはA〜Eの5種類があり、二種類が肝癌に関連しています。
B型肝炎ウィルスが原因の

     場合は癌が一個である場合が多く、C型の場合には癌が幾つもできる事が多いと言う指摘があります。

            -肝臓周辺臓器-
一方で転移性肝癌は他臓器の癌が肝臓に転移

したもので、肝臓はその機能の性質上、転移

の好発臓器です。

(御参考に転移性肝癌の原発臓器別肝臓転移度

もご覧下さい。)転移性肝癌も増加傾向にあ

ります輸血や注射針の使いまわし、血液製

剤などが原因で感染が広がりました。男性2〜

8に対して女性1と、圧倒的に男性に多いとさ

れております。


肝細胞癌は一般的に肝動脈支配で、腫瘍の小さい早期より、血管内(門脈内)に侵入して増殖・進展する傾向

が強く、腫瘍は時に胆管内に侵入・増殖し、閉塞性黄疸や胆道内出血を来たす事があります。転移は肝内が

最も多く、次いで肺、骨、腹膜、副腎、胆嚢などに確認され、転移の仕方は主に血行性転移です。


悪性腫瘍の中で頻度の最も高いものは、転移性肝癌で腹腔内諸臓器(消化管、胆道、膵臓、卵巣、子宮)などに

原発したものが肝臓に転移している。原発性悪性肝腫瘍の中では肝細胞癌が圧倒的に多く、胆管細胞癌(肝内

胆管癌)が次いで多い。
肝癌は再発し易い癌とされますが、それは肝臓内の血管が網の目の様に広がっていると

いう事から、転移したものが見逃されて再発するということはあります。ですが、それ以外に、より大きな原因として

肝炎ウィルスに感染していることがあげられます。それは手術により、完全に癌細胞を取り除いたとしても、肝炎

ウィルスの活動により、肝臓が癌になりやすい状態は残るとされるためです。それが二次癌を発生させているため

で、厳密にはこれは再発ではありません。しかし、再発と二次癌を見分ける事は極めて難しく、医学的にもそれを

分ける意味が殆ど無いため、二次癌も含めて再発としています。



* 肝癌は再発しやすい癌ですが、その再発を薬で予防する臨床試験が進行中であることが2008/10、28〜11、

01の癌学会で報告されています。森脇久隆岐阜大教授は非環式レチノイドを二年間毎日飲み、一年間の追跡臨

床試験の中間解析は6月に終わっており、2010年にその結論が出ると報告しています。肝癌の再発予防に有望

な事も示唆している様です。







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§2 肝癌(肝臓癌)の症状


     早期の肝癌(肝臓癌)は無症状です。慢性肝炎の患者さんは確実に、定期的に肝癌(肝臓癌)が出来ていないか

     の検査をする必要性があります。特にC型肝炎は自覚症状に乏しい特徴があり、潜伏期間が長く、感染してから

     30〜40年後に、肝硬変が進行し、肝細胞癌が発生する頃に浮腫や腹水が出現します。黄疸にまで至れば末期

     症状という事になります。肝硬変も自覚症状には乏しいので定期的な検査が極めて重要になります。発癌の率も

     慢性肝炎の進行度により、異なります。(例;軽度C型慢性肝炎の発癌率0.5%/年 中等度慢性肝炎1.5%/年

      重度慢性肝炎3%/年 肝硬変7%/年)



     肝癌は腹痛、腹部膨満感、腫瘤感、食欲不振、全身倦怠、体重減少、黄疸、発熱、悪心・嘔吐、浮腫、腹水、吐血

     ・下血などの症状がありますが、その特有の初期症状の自覚は乏しく、通常肝硬変の症状や、検査で気づく様

     です。進行すると上腹部、右季肋部の疼痛や肝腫大から、黄疸、腹水、発熱、浮腫、時に肝性脳症などを示す

     様になります。肝癌が腹腔内で破裂すれば、急激な腹痛、腹水出現、血圧低下をきたします。更に、頻度の比較的

     高いものとして、肝細胞癌はその過程で、低血糖発作や高コレステロール血症などを示す(腫瘍随伴症候群)事が

     あります。肝癌は肝外転移としては骨、肺が多いとされます。





     
§3 肝癌(肝臓癌)の発症の要因


     
§3−1 肝細胞癌の病因


     わが国ではHBV(B型肝炎ウィルス)、HCV(C型肝炎ウィルス)の長期持続感染が原因の大部分を占め

     ます。肝細胞癌の80〜90%に肝硬変などの進行した、慢性肝疾患が合併しており、正常肝に癌の発生を確認

     する事の方がまれで、これは肝細胞の壊死、再生の繰り返し(細胞回転の亢進)が、癌の発生に深く関与している

     と考えられております。従い、原発性肝癌の予備軍として、肝硬変があげられます。肝硬変は様々な原因で肝細胞

     が繰り返し損傷する事により発症するとされております。アルコールの長期間にわたる多量摂取、肝炎ウィルスの

     感染、薬物や毒物の長期摂取、自己免疫、胆汁の鬱血などがあげられております。中でも最も肝硬変を引き起こす

     原因として、肝炎ウィルスの感染が挙げられております。肝炎ウィルスに感染すると、肝臓を作っている細胞が炎症

     を起こして、肝炎となり、最終的に細胞が壊死し、肝硬変となります。肝硬変に対しては治療法が無いため、最終的

     には肝臓が完全に機能を失って死ぬか、肝癌を発症する事になります。




     * 肝臓癌のリスクを増加させる糖尿病

     2009、04に開かれた日本内科学会で、「糖尿病が長く続いた人には肝臓癌に罹患するリスクが増加する」という

     発表がなされました。 それによりますと、特にウィルスに関与していない非B非C型肝臓癌は、60歳以上で糖尿病

     の影響が強く窺えるというものです。 1991年〜2005年に肝臓癌と診断された1251例を解析した各型別の罹患

     率は、 B型ウィルスにより罹患した肝臓癌で20%、C型は65%、B・C型重感染は2%、ウィルスの関与がないと見

     られる非B非C型肝臓癌は13%でした。 そして、夫々の糖尿病の有病率を調べてみると、B型肝臓癌は20%と一

     般の糖尿尿頻度と同程度であったが、C型で25%、非B非C型肝臓癌では39%と高い数値を示した。厚生労働省

     の一般の糖尿病頻度の実態調査では、 60歳未満で7%、 60歳以上で18%ですので、糖尿病を持っていると肝

     臓癌に罹患するリスクが高い事が分かります。非B非C肝臓癌は謎が多いとされますが、「研究グループは、肝炎

     ウィルスの感染がない程、 糖尿病でインスリンの効きが悪くなるなどの代謝異常で、肝臓癌が発生しやすくなるの

     ではないかと考えています。」






     
§3−2 肝癌(肝臓癌)のスーパーハイリスク群


     あ
る研究報告ではHCV抗体陽性で血小板数が14万以下の場合を、肝癌のスーパーハイリスク群として設定し、

     この血小板数と肝細胞癌の発現に強い相関があるとされるものです。


それによりますと10年間の肝癌(肝臓癌)の

発癌率は血小板数が減少するにつれ上昇し、強

い相関を示すというものです。(17万/5% 

15万/15% 13万/30% 10万/80%

)この場合、肝臓の線維化も減少につれて増加

しています。ここでは発癌を抑えるためには炎

症を抑制することが必要で、特にGPTを年平均8

0以下にする事により、発癌率が1/4に低下す

ると報告されています。






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§4 肝癌(肝臓癌)の検査



     
関連検査値・基準値/肝癌


     血清ビリルビン血中アンモニアγ-GTPAST(GOT)/ALT(GPT)コリンエステラーゼ総コレステロール

     インスリンα-フェトプロテインPIVKA-UHBVHCV

     肝炎関連検査値・基準値/尿ウロビリノゲン血清総蛋白LDL-コレステロール便性状γ-GTP

     血清ビリルビン血中アンモニアコリンエステラーゼPIVKA-Uリウマトイド因子α-フェトプロテイン)、

     HBVHCV



     
§4−1 腫瘍マーカー/肝癌(肝臓癌)


     AFPPIVKA-Uを使用します。腫瘍マーカーは簡便なため良く使用されますが、数値が増加しているようであれば、

     画像診断などの検査を行う事になります。






     
§4−2 超音波検査/肝癌(肝臓癌)


     
超音波検査は非侵襲性であり、簡便なため外来で安心して受けられる検査です。癌のサイズが2p程度の大きさ

     であれば発見できますが、1cm程度になると難しいこともあり、医療関係者には癌の検査に習熟した技量が求め

     られます。検査は定期的にする必要があります。







     
§4−3 CT/肝癌(肝臓癌)


     肝癌(肝臓癌)は多発的に発生する傾向があり、肝臓内に別な病巣が無いかを調べるためにも使用されます。

     肝硬変の再生結節の中の小さな癌などでは検出は困難です。感度も70%程度と考えられております。造影剤に

     アレルギーのある場合や腎障害のある場合などは避けなければなりません。






     
§4−4 MRI/肝癌(肝臓癌)


     MRIは造影剤や腎機能に障害がある場合でも検査できます。立体画像が得られ高いコントラストも得られるが、

     近年の造影剤を使用する方法もあるためアレルギーのある場合などはその方法では使用できない。体内に金属が

     入っている場合も使用できません。






     
§4−5 血管造影検査/肝癌(肝臓癌)


     一般的に右足の付け根の動脈(大腿動脈)からカテーテルを挿入し、冠動脈に造影剤を入れ、撮影するもので

     肝細胞癌は血流が豊富のために陰影が濃く映ります。検査に引き続いて抗癌剤の注入や動脈閉塞物質の注入など

     の治療が行われる場合もあります。造影剤のアレルギー、腎障害のリスクに付いては考慮する必要があります。





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§4−6 腫瘍生検/肝癌(肝臓癌


     
腫瘍を穿刺して組織片をサンプリングするもので超音波下で経皮的におこなわれます。腹腔内出血や胆道出血、

     動脈短絡、播種などの合併症があるので極めて注意が必要です。




     
* 早期癌とは概ね直径1.5cm程度をさしており、この状態で発見するためには、定期健診が欠かせません。肝

     硬変で癌発生ハイリスクの患者さんを、 注意深く観察してゆく事で肝細胞癌は、早期発見が可能となります。肝

     臓の線維化の進行・血小板の減少・腫瘍マーカー(AFP、PIVKA−U)の上昇など血液検査と超音波検査です。

     比較的安全・簡便・安価に実施可能です。一度でもウィルス性肝炎と診断された方は、生涯定期検査を続ける事

     が大切です。 肝細胞癌の疑いがあれば、入院して、CT検査などを受ける事になりますが、近年では、ソナゾイド

     という優れた造影剤で正確な、仔細な診断も可能になっております。もう一つ大切な事があります。それは、早期

     発見できたとしても肝機能の状態が悪ければ、高い根治性治療を受けられない可能性があります。 日常生活で、

     肝臓に負担をかけない様に、飲酒・喫煙などの問題や、体調を良好に保ち、適度に運動する事、適切に筋肉をつ

     ける事などはご自分でコントロールできる性質のものです。良い体調であれば、例え肝臓を一部切除する事にな

     った場合でも、肝臓は、しっかり再生することが期待できます。







     
§5 転移性肝癌(転移性肝臓癌)


     
§5−1 転移性肝癌(転移性肝臓癌)の原発臓器別肝臓転移度

          -横から見た肝臓の位置-
原発臓器 肝臓転移率(%)
胆嚢 77、0
膵臓 68、8
卵巣 58、1
乳房 45、7
大腸 42、4
気管支・肺 39、2
子宮体部 37、6
32、5
子宮頸部 30、6
膀胱 28、2
食道 27、4
腎臓 21、5
肝・肝内胆管 16、0
前立腺 10、1





     
§5−2 転移性肝癌(転移性肝臓癌)の治療


     転移性肝癌の治療は一般的に原発癌に対する化学療法が中心になりますが、大腸癌の様に肝臓への転移を抑

     える事が出来、長期間延命の期待ができると見込める場合には、手術の様に局所的治療が選択される場合もあり

     ます。局所的な治療と全身的な化学療法の併用例もあります。





     
§5−2−1 手術療法/転移性肝癌(転移性肝臓癌)


     肝臓内の腫瘍の数が少ない場合に選択される療法です。腫瘍の数が多い場合でも、場所により、手術が可能な

     場合もあります。肝臓は再生力の強い臓器ですから全体の1/3程度の残存で機能の最小限の能力を維持できる

     といわれております。原発性肝癌では肝炎や肝硬変のために、機能が低下している事がおおいのですが、転移性

     肝癌の場合では、一般的には肝機能の低下は見られず、手術の対象となる範囲もかなり広く取ることができます。

     欧米の場合、肝臓内に転移した癌が4個以内で、肝臓の半分以上を残す事の出来る手術の場合には、延命効果

     があるとされております。大腸癌の場合、肝臓だけが転移先であることも多く、腫瘍を完全に切除できれば、延命

     効果がかなり高まる事、あるいは完治する事例もあります。





     
§5−2−2 電磁波焼灼法/転移性肝癌(転移性肝臓癌)


     腫瘍に電極針を刺し、マイクロ波やラジオ波を周囲に放射して、腫瘍の内部で熱を発生させて腫瘍の組織を熱で

     固めて殺してしまいます。原発性の肝癌(肝細胞癌)では焼灼法は一般的ですが、転移性肝癌でもこの方法は選

     択できます。但し、腫瘍の大きさはマイクロ波の場合には直径2p(〜3cm)以下、ラジオ波では直径3cm(〜4p)

     以下が望ましいとされております。身体の負担が少ないので侵襲性の高い手術が出来ない患者さんでも治療を選

     択できます。




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§5−2−3 全身化学療法/転移性肝癌(転移性肝臓癌)


     転移先が肝臓に限らず、他臓器に転移している可能性があれば、全身化学療法をおこないます。その場合に用い

     られる抗癌剤は原発癌に対する薬を選択します。





     
§5−2−4 動注法/転移性肝癌(転移性肝臓癌)


     転移が肝臓に限られる場合には、抗癌剤を肝臓の動脈から投与する事ができます。抗癌剤を癌に集中して投与

     できるため全身に抗癌剤を投与するよりも、治療効果が高いとされる治療法ですが、近年ではあまり採用されて

     おりません。





     
§5−2−5 肝動脈塞栓法/転移性肝癌(転移性肝臓癌)


     腫瘍が血液の運んでくる酸素や栄養を獲得出来ない様に、肝動脈を負債でしまう方法ですが、原発性肝癌には

     有効でも、転移性肝癌の場合は血液の供給量が少ないために殆ど選択される事は有りません。動脈から豊富に

     血流を受け入れているような場合には、検討される事があります。




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§5−2−6 対症療法/転移性肝癌(転移性肝臓癌)


     化学療法など効果が認められない場合には、患者さんのQOLを向上させる為、対症療法を中心とする療法が

     選択されます。患者さんの日々の生活が、少しでも苦痛の少ない時を過ごせるため、例えば、胆管が閉塞して

     黄疸が生じれば、胆汁を排出するドレナージ術を行います。穿刺やステントなどにより軽黄処置などをとります。

     近傍でない臓器癌(肺癌や膵臓癌)の患者さんが肝臓への転移を確認した場合には、多くの場合、転移癌は既に

     大きく成長しており、他臓器にも転移している事が多く、治療による効果を期待する事は難しい様です。




     
§6 肝臓内転移と肝臓内再発


     肝臓の内部は毛細血管が豊富で、肝臓内に一つでも腫瘍が生じますと、肝臓内の様々な場所に転移する可能性

     が高い。更に肺や骨、副腎、腹膜、リンパ節などにも転移を起こす可能性もあります。肝臓内の豊富な毛細血管の

     故に、癌細胞が血流に乗りやすいため、血流に乗った癌細胞は他の毛細血管に引っかかり易いとされ、これが

     癌細胞が肝臓内の別の場所に移動する事となります。後に再発するケースは肝臓内再発とよばれております。

     また、肝癌患者の大半が、肝炎ウィルスに感染しており、肝臓は癌になりやすい状態にあるとされます。これらが、

     肝臓が癌を再発し易い理由とされております。この再発癌と新しい癌を見分ける事は困難です。肝癌は完全に手

     術により、切除されたとしても、5年以内の再発率は70〜80%と、他の癌と比較して大変高い数値を示しており

     ます。肝癌は肝臓内に再発するケースが多いのですが、肺や骨などの遠隔転移も肝臓内再発と同時に起こす事

     もあります。




     
§6−1 肝臓内転移・肝臓内再発の治療



     
§6−1−1 手術療法/肝臓内転移・再発/肝癌(肝臓癌)


     腫瘍の数が3個以内で小さく、肝臓の機能の状態がよければ手術が検討されます。然しながら肝臓内での癌の

     再発が一端起こりますと、治療後に再発する可能性も高いため、手術の選択は難しいとされます。





     
§6−1−2 電磁波焼灼法/肝臓内転移・再発/肝癌(肝臓癌)


     腫瘍に電極針を刺し、マイクロ波やラジオ波を周囲に放射して、腫瘍の内部で熱を発生させて腫瘍の組織を熱で

     固めて殺してしまいます。原発性の肝癌(肝細胞癌)では焼灼法は一般的ですが、肝臓内転移・再発でもこの方

     法は選択できます。但し、腫瘍の大きさはマイクロ波の場合には直径2p(〜3p)以下、ラジオ波では直径3cm

    (〜4p)以下が望ましいとされております。身体の負担が少ないので侵襲性の高い手術が出来ない患者さんでも

    治療を選択できます。





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§6−1−3 肝動脈塞栓法/肝臓内転移・再発/肝癌(肝臓癌)


     肝臓に走る肝動脈と門脈により、肝臓は大部分の血流を供給されておりますが、肝癌は肝動脈から殆どの血流

     を受け取っております。肝動脈塞栓法はこの肝動脈を塞栓し、血流を止め、癌を死滅させるようにします。癌細胞

     は血流から酸素や栄養を得られません。正常な肝細胞は門脈からも、血液を供給されておりますので、死ぬ事が

     有りません。その際、先に抗癌剤を注入した後に肝動脈を塞栓する化学塞栓法などもあります。





     
§6−1−4 動注法/肝臓内転移・再発/肝癌(肝臓癌)


     肝動脈に抗癌剤を直接注入する方法で、癌細胞はこの肝動脈より酸素や栄養を受け取っています。抗癌剤を

     注入した後に、塞栓してしまう化学塞栓法も選択されております。抗癌剤を投与後、DSMやゼラチンスポンジを

     詰める方法や、造影剤リピオドール(癌細胞に長時間留まる性質がある)と抗癌剤を併用する方法などがありま

     す。造影剤が癌に留まるため抗癌剤も癌に留まり、癌細胞を殺す効果があるとされます。リピオドールには、癌

     細胞が酸素や栄養を得ている血管を詰まらせる性質もあり、癌の栄養補給のための血流を止める効果もあるよう

     です。肝臓全体に癌細胞が広がっている場合には、抗癌剤を肝動脈から注入し、インターフェロンを同時に全身

     投与する事により、高い治療効果が得られるとする報告も紹介されているようです。





     
§6−1−5 生体肝移植/肝臓内転移・再発/肝癌(肝臓癌)


     腫瘍が他の臓器に転移を認められず、臓器提供者が(家族に)おられる場合には、生体肝移植も検討される事が

     あります。生体肝移植はドナーも大きな危険を伴いますので、慎重に検討されなければなりません。




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* 遠隔転移/肝癌


     腫瘍が肝臓以外の臓器で、再発した場合には化学療法の効果も期待できません。ですが、近年の抗癌剤の研

     究開発により、分子標的治療薬などには生存期間を延長させるような報告が、腎癌などになされており、今後の

     治療環境は更に変遷してゆく可能性も高い。この段階では医師により考え方もあり、治療は対症療法(肝機能

     を保護する薬の使用、腹水が溜まるのであれば利尿薬、出血し易いために輸血や、消化管からの出血は止血が

     難しいため、胃・腸などの潰瘍や食道静脈瘤などの検査、静脈瘤が発見されればその対策施療、黄疸が現れた

     場合の減黄措置など)を行うと共に、QOL向上を優先する考え方の医師などもおります。






     
§7 肝癌(肝臓癌)の分類


    
 §7−1 肝細胞癌の病期


T因子 N因子 M因子
StageT T1 N0 M0
StageU T2 N0 M0
StageV T3 N0 M0
StageWA T4 N0 M0
T1、T2、T3、T4 N1 M0
StageWB T1、T2、T3T、4 N0、N1 M1
     


     
§7−2 腫瘍の評価/肝癌(肝臓癌)

     
T 腫瘍の評価 T1 T2 T3 T4
@腫瘍個数/単発
A腫瘍径 2p以下
B脈管侵襲なし
(Vp0.Vv0.B0)
@AB全て該当 2項目該当 1項目該当 全て該当しない
     
     癌腫の個数、大きさ、脈管侵襲の3項目により評価される。複数の癌腫は多中心性癌腫であっても肝内転移癌腫で
     あっても良い。肝細胞癌破裂S3はT4として評価する。


N リンパ節
N0 リンパ節転移を認めない
N1 リンパ節転移を認める
M 遠隔転移
M0 遠隔転移を認めない
M1 遠隔転移を認める

                                                       
by 日本肝癌研究会



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         -肝癌(肝臓癌)の病期-
肝臓癌の進行度は癌の出来方により、病期分

類されます。ですが、癌の悪性度は出来た位

置や病変部の血流の多さなども関係し、小さ

くても脈管の近傍に出来た癌は悪性度が高い

とされ、右図の分類も、目安です。T期(単

発で、直径2p未満で、小さく、脈管への侵

襲もない。U期(多発・直径2p以上・脈管

への侵襲の要素のうち、いずれか一つに当て

はまる。


小さいけれども多発しているなどが該当します)。V期(多発・直径2p以上・脈管への侵襲の要素のうち、

2つに当てはまる。多発癌の一つが脈管の近傍にある場合などが該当します)。W期(多発・直径2p以上・

脈管への侵襲の要素のうち、全てが当てはまる。orリンパ節転移がある。遠隔転移(Wb)があるなどが該当

します。
                                     by 日本肝癌研究会






     §7−3 肝腫瘍の組織学的分類


T 上皮性腫瘍(epithelial tumours)
 A 良性(benign)
  1 肝細胞腺腫[liver cell adenoma (hepatocellular adenoma)]
  2 肝内胆管腺腫(intrahepatic blue duct adenoma)
  3 肝内胆管嚢胞腺腫(intrahepatic blue duct cystadenoma)
 B 悪性(malignant)
  1 肝細胞癌[hepatocellular carcinoma (liver cellcarcinoma)]
  2 胆管細胞癌(肝内胆管癌)[cholangiocarcinoma (intrahepatic bile ductcarcinoma)]
  3 胆管嚢胞腺癌(bile duct cystadenocarcinoma)
  4 肝細胞癌・胆管細胞癌の混合型(combined hepatocellular and cholangiocarcinoma)
  5 肝芽腫(hepatoblastoma)
  6 未分化癌(undifferentiated carcinoma)
U 非上皮性腫瘍(non-epithelial tumours)
 A 血管腫(haemangioma)
 B 小児性血管内皮腫(infantile haemangioendothelioma)
 C 血管肉腫(haemangiosarcoma)
 D 胎芽性肉腫(embryonal sarcoma)
 E その他(others)
V 種々混成の腫瘍(miscellaneous tumours)
 A 奇形腫(teratoma)
 B 癌肉腫(carcinosarcoma)
 C その他(others)
W 未分類腫瘍(unclassified tumours)
X 造血及びリンパ性腫瘍(haemopoietic and lymphoid tumours)
Y 転移性腫瘍(metastatic tumours)
Z 上皮性異常(epithelial abnormalities)
 A 肝細胞異形成(liver cell dysplasia)
 B 胆管異常(bile duct abnormalities)
[ 腫瘍類似病変(tumour-like lesions)
 A 過誤腫(hamartomas)
  1 間葉性過誤腫(mesenchymal hamartoma)
  2 胆管性過誤腫[biliary hamartoma (microhamartoma,von Meyenburg complex)]
 B 先天性胆管嚢胞(congenital biliary cyst)
 C 限局性結節性過形成(focal nodular hyperplasia)
 D 代償性肝葉肥大(compensatory lobar hyperplasia)
 E 肝紫斑症(peliosis hepatis)
 F 異所発生(heterotopia)
 G その他(others)

                                                                 
by WHO







     
§8 肝癌(肝臓癌)の治療


     肝癌は腫瘍の進展度と共に、その時点で生命予後因子となる機能を評価する肝予備能(炎症を起こしているその

     時点において、肝機能がどの程度の、本来機能を有するかを、蛋白合成能、排泄能、腹水や脳症の有無など)を

     総合的に判断し、肝予備能を充分に把握した上で、治療法を選択しなければなりません。生命予後改善のため

     にも、肝予備能の温存は極めて重要な事になります。




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§8−1 手術療法/肝癌(肝臓癌)


     大きな治療効果を得られますが、反面侵襲が大きいため、肝予備能の保たれている、単発の肝癌が適応としては、

     良い適応例とされます。切除範囲も比較的小さく切除し、残肝予備能を考慮します。肝癌は手術で切除するのが

     基本ですが、肝硬変のため手術が出来ないケースが多く、肝癌で手術できる人は3割程度といわれております。

     ただ、ウィルス性肝炎が原因である事も広く知られてきており、ウィルス性肝炎の患者さんは、定期的な健診を

     受ける事が多いため、早期発見も増えております。肝癌は手術(30%)、経皮的局所療法(エタノール注入療法、

     ラジオ波焼灼療法など)、肝動脈塞栓療法が主な治療法で、放射線療法は骨に転移した時などに限られ、化学

     療法は効果はあまり期待できないとされています。手術の5年生存率は50〜60%、エタノール注入療法は40

     〜50%、肝動脈塞栓療法は10〜20%とされております。(生存率は手術療法が優れている様に、見えますが、

     手術の出来る方は、条件の整った方に限られるため一概に比較は出来ません。)



     * 赤外観察カメラシステム(PDE)

     癌手術前のリンパ節検査などに広く使われ、近赤外線を照射すると光を出す「インドシアニングリーン」(ICG)が

     投与後も数日間、肝細胞癌の癌化部分にだけ残留する性質を利用し、手術中にPDEで肝臓に近赤外線を当て

     て、ICGの残留部分を撮影する事により、切除予定の主要な癌部分のほか、コンピューター断層撮影装置(CT)

     など、従来の手法では検出できない直径3ミリ程度の小さな癌細胞が白く光り、特定できる。浜松ホトニクスが

     開発したPDEはカメラでリアルタイムに癌を発見し、モニターを見ながら手術できる、おそらく世界初のシステムと

     されております。







     
§8−1−1 経皮的エタノール注入療法(PEIT)/肝癌(肝臓癌)


     小肝細胞癌(腫瘍系3p以下、3病巣以内)が対象の療法です。超音波ガイド下に穿刺して、腫瘍部に直接エタノール

     を注入する事により、癌を瞬時に凝固、壊死させる目的の治療法で、侵襲が少なく、再発に対しては、繰り返し

     治療可能な方法ですが、腹水のある症例では実施する事は出来ません。






     
§8−1−2 経皮的マイクロ波凝固治療法(PMCT)/肝癌(肝臓癌)


     小肝細胞癌(腫瘍系3p以下)が対象の療法です。超音波で腫瘍全体が描出できるものが対象で、近年ではマイ

     クロ波より周波数の低いラジオ波を用いたラジオ波焼灼術(RFA)も開発され、前記よりもう少し大きい腫瘍に

     対しても適応できるようになっております。超音波画像で癌の位置を特定し、体外から電極針を刺し、電極針から

     出るラジオ波の力で肝を焼灼します。




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§8−1−3 肝動脈塞栓術(TAE)/肝癌(肝臓癌)


癌細胞が肝動脈から栄養や、酸素を取り込む事が出

来ないように、肝動脈に穿刺し、針のガイドワイヤ

ーを挿入して穿刺針を抜いた後、ガイドワイヤーを

通してカテーテルを目的とする位置に挿入し、腫瘍

支配動脈に1o角大のゼラチンスポンジなどに抗癌

剤をしみ込ませて塞栓し、腫瘍を壊死させる方法で

す。門脈本幹を腫瘍が塞栓している場合や、肝予備

が高度に低下している場合には出来ません。多発

病巣を呈する状況下に適応されます。


肝臓癌は90%以上の血流支配を、肝動脈から受けており、一方で正常肝細胞は門脈から約75%、肝動脈から

25%血流を受けているとされる為、肝細胞癌への動脈の血流を遮断すれば、癌細胞は壊死し、周囲の正常な

肝細胞は保たれるといえます。この考え方を利用するのが肝動脈塞栓療法です。癌が肝臓の内部に留まって

いれば、制限をあまり受けず、また、肝機能の制限も比較的緩く、黄疸・腹水などが無ければ施療可能です。

入院期間も短く、副作用も腹痛、吐き気、食欲不振、発熱などが有りますが、2〜3日で治まります。但し、完全に

治ってしまう確率はあまり高くないため、繰り返し施療する必要があります。





     
§8−1−4 外科的療法/肝癌(肝臓癌)


     
§8−1−4−1 肝切除/肝癌(肝臓癌)


     肝臓は門脈に沿って8つの領域に分ける事ができます。肝切除では癌がある区域全体を、その領域ごとに分けて

     考え、その部位を切除します。腫瘍が両区域にまたがる場合にはその両区域全体を切除します。






     
§8−1−4−2 生体肝移植/肝癌(肝臓癌)


     健康な人の肝臓の一部を患者に移植する方法で、本来、肝臓には、再生力があるためその再生力に頼る考え方

     です。

     移植された肝細胞はやがて元の大きさに再生する事を狙ったものですが、移植後には拒絶反応を防ぐために、免疫

     抑制剤を使用することになります。肝細胞癌の肝移植後の再発率は39%と高く、5年生存率も18%に過ぎません。

     悪性腫瘍をのぞいた他の末期肝不全患者の肝移植後、5年生存率は70%前後あることを考慮しますと、その有効性

     には疑問があります。しかし、一方で、適応を限定するとその有効性も評価できるようです。そこで近年では腫瘍

     の大きさ、個数、占拠範囲などを考慮するなどから肝移植予後推測も見直されつつあります。Mazzaferroらは肝細胞

     癌の最大径3cm以下、腫瘍個数3個以下であることが予後良好の因子と指摘しています。






     
§8−2 放射線療法/肝癌(肝臓癌)


     腫瘍径が10cm未満で、肝予備能が保たれており、肝内に留まっている場合に適応になります。一般的には、

     直線加速器を用いた高エネルギーのX線を外部より照射するリニアック照射法が行われております。他には重荷電

     粒子線と用いた(陽子線は体内の一定深度で、高線量域を形成し線量が表面で少なく、体内深部で大きくなる特性

     を有する)治療も開発されております。





     
§8−3 化学療法/肝癌(肝臓癌)


     化学療法の有効性に関しましては一般的に低いといわれております。局所療法適応が難しい場合には、化学療法

     となりますが、シスプラチン5-フルオロウラシル(5-FU)マイトマイシンCアドリアマイシンなどが

     用いられます。








     * 肝予備能/炎症が起こっている時点で肝機能を評価するもので、肝臓本来の機能である蛋白合成能(アルブミン、

     凝固因子など)、ビリルビン代謝(黄疸)、排泄能(アンモニアなど)、腹水や脳症の有無などがその対象であり、総合

     的に判断されます。







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