§1 慢性骨髄性白血病 CML(chronic myeloid leukemia)
慢性骨髄性白血病は急性白血病とは異なり、増殖能ばかりではなく、分化成熟能もあるため白血病裂孔を伴わず、
脾臓の腫大、フィラデルフィア染色体(Philadelphia Ph1)という異常染色体を持つ細胞、各成熟段階の血液細胞
が異常に増殖する。これは幹細胞レベルの腫瘍化により、骨髄および、末梢血の幹細胞プールの増加を来たす
ためである。中年以降に多い疾患ですが、若い人にも確認されます。そのうち、若年型慢性骨髄性白血病に付いて
はフィラデルフィア染色体を持たない、異なる疾患です。
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§2 慢性骨髄性白血病の症状
慢性骨髄性白血病の初期症状は希薄で、健康診断で発見される事も少なく有りません。又、脾臓の腫脹による
腹部膨満感、腹部圧迫症状、疲れ易い、体重減少、寝汗などで受診して発見される事もあります。ただし検診
などで、早期に発見されるときは脾臓の腫脹を伴わない事は、多々有ることです。骨髄の過増殖により、胸骨の
叩打痛・圧痛を認める特徴もあります。慢性骨髄性白血病の場合には白血病の3徴といわれる、貧血、発熱、
出血傾向は診断時に確認できることはまれです。その他全身倦怠感、骨痛、腹痛、めまい、頭痛などや、胃潰瘍
の合併も良く知られるところです。
§3 慢性骨髄性白血病の進展
慢性骨髄性白血病は慢性期(CP/chronic phase);血球の文化を伴う増殖期、移行期(AP/asselerated phase)
;慢性期から急性転化に移行する段階、急性転化(BC/blastic crisis)未分化の芽球が単調に増殖する時期、
の3段階にわけられます。慢性期は大きな臓器障害などはありません。
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3〜4年or6〜7年の経過の後に、末期急
性転化の経過をたどります。急性転化は急
性白血病と同様な、未熟な白血病細胞が増
加する事で、急性転化を起こしますと化学
療法に反応しなくなり、約90%の方が3
〜6ヶ月で亡くなります。慢性骨髄性白血
病の診断後の平均生存期間は3〜4年とも
いわれています。上記の様に年数に偏差が
あります。
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§4 慢性骨髄性白血病の検査
関連検査値・基準値/慢性骨髄性白血病
血小板数、白血球数、赤血球数、尿潜血
§4−1 血液検査/慢性骨髄性白血病
§4−1−1 慢性期/慢性骨髄性白血病/血液検査
通常4000〜10000個/ox3 ある白血球数が異常増加し、時には数万〜数十万個/ox3 になります。増加する
白血球は未熟なものから、成熟球まで各段階のあらゆる細胞が異常増殖します。好塩基球、好酸球も増加します。
貧血は発症の初期には確認できませんが病気が進行しますと現れてきます。また慢性骨髄性白血病では血小板
数が増加している事も多く確認されます。好中球アルカリホスファターゼ(NAP/neutrophil alkaline phosphatase)
活性は低値を示すのも特徴です。
血清Vb12は著しい高値を示します。これは慢性骨髄性白血病の顆粒球系細胞中に、Vb12が多く含まれているた
めで、細胞の崩壊により、血清中の濃度が高まる事によるものです。(血清Vb12は例外なく高値を示します。これは
血清中のVb12結合蛋白のトランスコバラミンTが増加するためです。急性転化を起こすとTCTは減少し、TCUが
増加します。)又、血球の増加とその破壊により、血清LDHの増加、尿酸の増加、血清ヒスタミンの増加も認めます。
§4−1−2 急性転化/慢性骨髄性白血病/血液検査
末梢血は芽球が増加し、白血病裂孔を認める急性骨髄性白血病と類似した状況になります。更に貧血の進行、
血小板減少も来たします。この増加する芽球はリンパ芽球、骨髄芽球のこともあり、混合系統型芽球が出現する
事もあります。これは、慢性骨髄性白血病の腫瘍化が多能性幹細胞レベルであるためです。NAP活性は高値を示す
ようになります。
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§4−2 骨髄穿刺/慢性骨髄性白血病
慢性骨髄性白血病では骨髄は著しい過形成を示します。骨髄検査により染色体を調べます。
特にフィラデルフィア染色体と呼ばれる異常な染色体が見つかる事がこの疾患の診断上の有力な手がかりになり
ます。慢性骨髄性白血病では特に、顆粒球系(M)の増殖が著しく、M/E(E/赤芽球系)比は極めて高い値を示し
ます。また、各段階での顆粒球の比率は、正常値と大きな差は有りませんが、全体が増加しています。好塩基球、
好酸球も幼若を含め、増加しています。赤血球系は相対的に比率が低下していますが、特に形態の異常などは
ありません。更に、骨髄巨核球も増加し、白血病裂好は認められません。
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-骨髄穿刺針 模式図- |
血液検査で異常を認めた場合、骨髄検査を
して白血病細胞があるか顕微鏡で確認し、骨
髄性白血病か、リンパ性白血病であるか判定
します。骨髄検査で殆ど診断は確定します。
骨髄検査は骨髄穿刺と呼ばれ胸骨あるいは、
腸骨に針を刺して骨髄液を少量(約0、5
ml)採取し検査します。白血病細胞が多数確
認されれば決め手になります。この骨髄液を
更に、ギムザ染色という染色法により顕微鏡
下で確認することにより、白血病細胞の種類
を特定します。これを骨髄性か、リンパ性か
を判定するために、ペルオキシダーゼ染色で
鑑別します。これにより急性、慢性、骨髄性
、リンパ性の診断をします。 |
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ドライタップ(dry tap)という現象がおきることがあります。これは骨髄穿刺を行って吸引しても、骨髄が充分
に引けてこない状態で、骨髄中に細胞成分が詰まっている場合(packed marrow)、線維化が有る場合、骨髄が
低形成である場合、穿刺技術に問題が有る場合などです。 |
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§4−2−1 慢性期/慢性骨髄性白血病/骨髄検査
慢性骨髄性白血病ではコロニー形成法で、最も未熟な段階と考えられるコロニー形成単位(CFU-mix)は骨髄末梢血
共に極めて増加しています。特に末梢血での増加は著しく、やや分化した段階の顆粒球、単球系のコロニーを形成
する培養コロニー形成単位(CFU-GM)でもやはり増加を示す。これは造血幹細胞のプールが増加する為で、脾腫は
増加した白血球の浸潤によって生じるものです。赤血球の幹細胞、赤血球バースト形成単位(BFU-E)、赤芽球
コロニー形成単位(CFU-E)共に増加しますが、実際の症例では赤血球増加を認める事が少なく、貧血を示す例が
多いとされ、解明が待たれます。
§4−2−2 急性転化/慢性骨髄性白血病/骨髄検査
芽球で占められた骨髄では、3系統の細胞は著しく減少します。場合により、線維化も伴いますが、これは急性
転化以外に慢性期、治療薬の影響の場合もあります。急性転化で造血幹細胞プールは急激に減少し、白血球の
分化成熟能は失われて、芽球が増加します。コロニー形成能ん低下は急性転化と同時に急速に出現し、慢性期から
急性転化への予測も難しい状態です。
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§5 治療/慢性骨髄性白血病
慢性骨髄性白血病の治療では骨髄移植と化学療法に大別されますが、本疾患は造血幹細胞がフィラデルフィア
染色体(Ph1)陽性クローンとなるために、全ての血球系が異常クローンと置き換わっています。治療はこのPh1
クローンの根絶、正常クローンの回復にあり、骨髄中に残存するPh1陰性クローンの量は、時間の経過に従いor
病期が進行するほどに減少してしまい、治療がますます困難になります。(御参考に予後もご覧下さい)
§5−1 慢性期/慢性骨髄性白血病/化学療法
§5−1−1 インターフェロンα(IFN-α)/慢性骨髄性白血病/化学療法
インターフェロンαはフィラデルフィア陽性クローン(Ph1クローン)に特異的に作用するといわれ、従来使用
されてきた、ブスルファンとの比較ではPh1クローンの減少は、生存率でIFNαの方が有為に長いとされる報告が
多い。(英国の研究報告では、生存期間中央値はIFN/5、5年 ブスルファン/3、8年 ヒドロキシウレア
4、7年)インターフェロンは筋肉注射、あるいは皮下注射で使用されますが、投与を続ける事により、慢性
骨髄性白血病(Ph1陽性クローン)の根治も期待できるとされますが、細胞遺伝学効果はIFN使用開始後、1年
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以内に起こり、それ以上の継続投与では、効果
は期待できないとされます。有効例の場合は長
期間の継続投与が必要とされ、検査法の測定感
度の問題から、検出されずにざんそんしている
Ph1クローンからの急性転化が起きる可能性が
あり、IFNα単独の治療による治癒の症例はそ
れ程多くないとされています。使用開始時にイ
ンフルエンザ様症状、悪寒戦慄、発熱、倦怠感
、食欲不振などがありますが、非ステロイド系
の解熱薬でコントロールできる事が多いとされ
ております。
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症状は使用を重ねる事により、慣れ、軽快、消失する事が大部分です。骨髄抑制、血小板減少は中止、減量で
速やかに回復します。 |
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§5−1−2 ブスルファン/慢性骨髄性白血病/化学療法
従来、慢性骨髄性白血病の治療薬として広く、使用されてきました。血球増加や脾臓の腫大を押さえるためです
が、ヒドロキシウレア、インターフェロンの出現で使用が減ってきました。DNAの合成阻害により細胞の増殖、
分裂を阻害するアルキル化剤です。顆粒系細胞に選択的に働く特徴がありますが、同種骨髄移植を予定している
場合には使用しない方が良い。ある見解では、ブスルファンを含むアルキル化剤は、DNA阻害によるDNA変異原性
を持つために、急性転化をかえって早めるという考え方がある。経口剤で比較的安価で扱い易いとされます。
§5−1−3 ヒドロキシウレア/慢性骨髄性白血病/化学療法
核酸の合成阻害により細胞の増殖を抑制する代謝拮抗剤です。内服治療薬の第一選択薬です。安全で使い易く
蓄積作用が有りません。白血球数を2000〜5000/μl と比較的低めに維持する事で急性転化までの期間
を延長できるとされております。この場合でも血小板数は10万/μl 程度に維持できる事が多いとされ、副作用
は骨髄抑制が有りますが、中止、減量により速やかに回復し、遷延することは少ないとされております。長期間
の使用では爪の色素沈着、皮膚潰瘍なども認められます。皮膚潰瘍に付いては中止、減量で改善する事が多いと
されております。
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§5−2 慢性期/慢性骨髄性白血病/骨髄移植
慢性骨髄性白血病は骨髄中の全ての血液細胞がPh1クローンに置き換わっていますので、根治的治療では現況では
唯一、骨髄の総入れ替え、骨髄移植などの幹細胞移植(stem cell transplantation)しか有りません。日本
造血幹細胞移植学会によりますと、慢性期、同胞間、同種骨髄移植での5年生存率は70%です。同胞間などの
血縁者移植は血縁者にHLAの合うドナーがいない場合は出来ません。移植後の再発に関与する因子として、微小
残存病変(minimal residual disease;MRD)が最も多い。同種幹細胞移植は45〜50歳くらいまでとされ、高齢
になりますと、例えドナーが存在しても困難といわれております。自家骨髄移植、自己末梢血幹細胞移植も
試みられて来ましたが、その有効性は確立されていない現状とされます。(その中に臍帯血幹細胞移植も含まれ
ます)但し、近年骨髄非破壊的同種幹細胞移植(ミニ移植)があり、これは移植の対象年齢を、高齢者まで
広げる事が出来るとされております。その場合にはドナーリンパ球輸注(donor lymphocytes infusion;DLI)
などの免疫療法も追加しなければなりません。
§5−3 骨髄液採取
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§5−3−1 骨髄液採取方法 |
-骨髄液採取部位- |
骨髄液は手術室で、通常は全身麻酔下で麻
酔台上で、腹臥位で両側の後腸骨陵から、
専用の穿刺針を用い、3〜10ml/回 の
骨髄液を採取します。患者さんの体重あた
り3x10x8乗/s の細胞数の採取を
目指し、ドナーの安全のためにドナー体重
あたり10〜20ml/s(およそ、500
〜1000ml)の骨髄液を採取する事にな
ります。採取は場所を変え、深さを変えて
採取します。
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(皮膚は数箇所、腸骨は数十箇所の穿刺となり、)採取時間は1〜2時間、麻酔からの導入から終
了までは2、5時間〜3、5時間となり、その後、数時間は回復室で観察して、病室に戻ります。 |
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§5−3−2 骨髄採取・麻酔に伴う合併症
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T 要注意合併症(まれに起きる) |
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@悪性高熱症;発症の予測が出来ず、治療が遅れると、致死的 |
A肺梗塞;海外で死亡例が報告されている。 |
Bその他の合併症;後腹膜血腫、C型肝炎感染、一過性の片麻痺、喉頭肉芽腫、硬膜外麻酔併用による硬膜
損傷、腎盂腎炎などが報告されております。 |
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U 頻度の高い合併症(%は非血縁ドナーに関する骨髄採取病院からの報告によります) |
@血圧低下(麻酔中の収縮期血圧80oHg以下);何れも一過性(4、5%) |
A血尿;導尿カテーテルによる。大半は顕微鏡的血尿(1、2%) |
B不整脈;何れも一過性(0、5%) |
C義歯の損傷・ぐらつき;挿入管の事故(0、1%) |
D採取針の破損(0、6%) |
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§5−4 移行期/慢性骨髄性白血病/治療
移行期は急性転化の治療に準じますが、急速に進行する脾腫や白血球増加にヒドロキシウレアの比較的、大量
投与が有効な場合があります。また、シタラビンの少量投与、シタラビンの経口誘導体シタラビンオクホスファート
の投与が有効な場合もあります。移行期の場合でも、又、幹細胞移植は根治の期待できる療法です。
(予後/同胞間同種骨髄移植も御参考にご覧下さい)
§5−5 急性転化/慢性骨髄性白血病/治療
急性転化は急性白血病に準じた治療法をとることが多いが、その有効性となると、急性白血病に比べて著しく
低い状況です。
§5−5−1 リンパ芽球性急性転化/慢性骨髄性白血病/治療
ビンクリスチンとプレドニゾロンの併用療法(VP療法)やVP療法にドキソルビシン(AsVP療法)、ダウノルビシン
(DVP療法)を追加した療法などが有効とされ、50%の症例で慢性期に戻す事が出来るとされております(第二
慢性期)。しかし、その持続は短く早期に再発するとされます。
§5−5−2 骨髄性急性転化/慢性骨髄性白血病/治療
急性骨髄性白血病様の骨髄芽球による急性転化の治療に、急性骨髄性白血病の方法を用いても、通常は無効の
ことが多い。一般的にはリンパ芽球性急性転化と同様の多剤併用療法を用いる事が多いようです。一般的には
治療は困難とされ、慢性期に戻せる可能性は極めて低いとされております。
§5−6 その他の急性転化/慢性骨髄性白血病/治療
巨核芽球性急性転化や、その他芽球が混在するような、混合性急性転化の療法は知られておりません。一般的には
リンパ芽球性急性転化と同様の多剤併用療法を用いる事が多いようですが、その治療効果は極めて低いようです。
唯一治療を期待できるのは、同種幹細胞移植だけで、HLA一致が条件ですが、患者の状態が許す場合には試みる
事は価値があります。(予後/同胞間同種骨髄移植も御参考にご覧下さい)
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§6 予後/同胞間同種骨髄移植生存率 %(慢性骨髄性白血病)
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1年 |
2年 |
3年 |
4年 |
5年 |
慢性期 |
82、3 |
75、8 |
74、4 |
71、4 |
69、5 |
移行期 |
65、0 |
52、6 |
48、8 |
48、8 |
48、8 |
急性転化 |
49、5 |
38、7 |
38、7 |
38、7 |
38、7 |
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症例数 慢性期;381 移行期;41 急性転化;42
by 日本造血幹細胞移植学会
§9 慢性骨髄性白血病の病期分類 by IBMTR(International Bone Marrow Transplantation Registry)
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慢性期 |
1、重大な自覚症状が無い |
2、移行期又は急性期の特徴を持っていない |
(注;顆粒球過形成、Ph1染色体/あるいは他の細胞遺伝学的異常が骨髄中に認められる) |
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移行期 |
1、慢性期に通常使用される薬剤を、増量or投与間隔短縮しても白血球数の調節不能 |
2、白血球の急激な増加(5日以内に倍増) |
3、末梢血又は骨髄における芽球≧10% |
4、末梢血又は骨髄における芽球+前骨髄球≧20% |
5、末梢血における好塩基球+好酸球≧20% |
6、代表的薬剤により改善しない貧血or血小板減少 |
7、持続性の血小板増加症 |
8、付加的染色体異常(新しいクローンの出現) |
9、治療中にも関わらず増大する脾腫 |
10、chloroma(緑色腫)*1又は骨髄線維症への進行 |
11、2回目(orそれ以降)の慢性期症例 |
(上記項目に少なくとも1つ以上該当する場合移行期とする) |
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急性期 |
末梢血又は骨髄における芽球+前骨髄球≧30% |
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*1 緑色腫/骨髄性白血病細胞が腺瘤を形成することがあり、その割面が緑色を呈する事から命名されている。
これは急性骨髄性白血病などで骨髄芽球が腫瘤を形成する場合(骨髄芽球腫とも呼ばれる)と慢性骨髄性白血病
において、白血病裂孔無く、各成熟段階の白血病細胞が腫瘤を形成する場合、(顆粒球肉腫;granulocytic
sarcoma)
がある。慢性骨髄性白血病も芽球が腫瘤を形成する事もある。(髄外急性転化)
* 白血病裂孔/急性白血病では血液細胞の成熟(分化)が停止するために、若い白血病細胞(芽球)が蓄積します。
そのため、白血球の分化過程の中間段階がなくなり、芽球とわずかに残った正常な成熟細胞だけが確認できる。
この成熟段階に孔が穴があいたような状況を白血病裂孔といいます。
* 好中球アルカリホスファターゼ(NAP)/成熟好中球の細胞質に存在する酵素で、感染症など好中球が活性化された
環境下で増加します。慢性骨髄性白血病では好中球の形態に異常が無いのにも関わらず、NAPが低値を示すのが
特徴です。又、移行期から急性転化の前にNAPは上昇するため、臨床上でも有力な指標となっています。更に慢性
骨髄性白血病との鑑別が必要になる骨髄線維症、類白血病反応、真性赤血球増加症などではNAPの低下は無い
ため、こちらでも有用な指標となります。
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* フィラデルフィア染色体(Ph1)/フィラデルフィアのNowellとHungerfordは慢性骨髄性白血病の多くの症例から、
21番染色体長腕の部分欠損が存在する事を発見し、フィラデルフィア(Philadelphia/Ph1)染色体と命名、これは
22番染色体の異常と訂正され、更に1973年には9番染色体の長腕の一部との相互転座と解明された。
(この染色体異常は、現在では、その染色体の切断点からt(9;21)(q34;q11)と記載されている。)Ph1染色体異常は
慢性骨髄性白血病の95%に認められます。これは慢性骨髄性白血病が多能性幹細胞の段階で起きている事を
示唆するものです。
* コロニー形成法/骨髄穿刺により取り出されたヒトの骨髄細胞を、寒天やメチルセルロースなどで出来た培地
に播き、血清や種々の造血因子を加えて培養します。出来たコロニーは培養条件により、様々な系統の細胞が
含まれていますが、これら骨髄中の未分化名造血幹細胞から有る程度分化傾向を持った幹細胞までを定量します。
* 幹細胞移植/同種造血幹細胞移植は、従来骨髄のみでしたが、近年ではG-CSFなどのサイトカインをドナーに
比較的大量に投与して、末梢血に幹細胞を動員し、アフェレーシスで採取する方法が開発されております。健常人
へのサイトカイン投与による長期的安全性に付いては、確認がされていないものの、骨髄採取に比して、全身
麻酔が不要で、外科的手技(骨髄生検)が不要のため、末梢血幹細胞移植は増加しております。(免疫性神経
疾患では患者血液中にある病因物質<サイトカインなど>が病態に関与しており、主として大分子量の病因物質を
除去するため血漿交換、免疫吸着療法などのアフェレシス治療が行われる。)
* G-CSF/顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor)
G-CSFはエンドドキシン(細菌内毒素)や炎症性サイトカインなどの刺激により、単球、マクロファージ、血管
内皮細胞、線維芽細胞などから産生されるもの
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* サイトカイン/細胞(cyto)が産生・分泌し、細胞間のシグナル伝達に関与するタンパク質性の液性因子で、
様々な造血因子、インターロイキン、インターフェロン・腫瘍壊死因子(TNF)が含まれます。(例;エリスロ
ポイエチン、G-CSF、IL-1、IL-3)。種々の細胞から産生され細胞の分化、増殖に重要な生理活性物質です。
* HLA/human leukocyte antigen(ヒト白血球抗原)6番染色体短腕に位置する遺伝子群によって出来る抗原。
A,B,C,DR,DP,DQの遺伝子座よりHLAは作られます。同種造血幹細胞移植ではドナーと患者のHLAの一致が重要で
あり、不一致により重症化する例として移植片対宿主病というドナーの造血幹細胞に混在していたT細胞が患者の
臓器や組織を、免疫学的に攻撃する状態が高頻度に出現します。
* ミニ移植/骨髄非破壊的同種幹細胞移植では従来の幹細胞移植と異なり、患者の骨髄を完全に空にしないで、
ある程度温存します。そこにドナーの幹細胞を移植し、骨髄細胞を徐々に置き換えて行く方法です。強力な免疫
抑制剤(リン酸フルダラビンなど)を中心として、比較的少量の抗癌剤、免疫抑制剤、低線量全身放射線照射を
組み合わせ、移植前の前処置を行い、幹細胞を輸注するもので患者の骨髄は、一時的にはドナーの細胞と共存
する段階(混合キメラ)を経て、徐々にドナーの細胞に置き換わります(完全キメラ)。患者は骨髄が完全に空に
なる事が無いために、骨髄の機能はある程度保たれます。そのため高齢者やハイリスク患者でも同種移植が可能
になります。
* ドナーリンパ輸注(DLI)/同種幹細胞移植において、身体にある腫瘍細胞は移植前処置の治療で壊され、移植
されたドナー細胞由来の特殊なリンパ球(細胞障害性リンパ球)によっても更に破壊されます。細胞障害性リンパ球
の量を増やして、その活性を高める目的で、移植後にドナーから、アフェレーシスでリンパ球を採取して患者に
輸注するのがDLIです。
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