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§2−1 |
全身倦怠感/ターミナルケア(終末期ケア)
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全身倦怠感を訴える頻度は、最終末では最も多く、その原因は貧血、電解質異常(高カルシウム血症、低カリウム血症、低ナトリウム血症)、血糖値異常、脱水、薬剤因性、不眠、感染症、臓器不全、抑鬱などが有るとされております。 |
適切なリハビリテーションは全身倦怠感を改善させ、日常生活動作を改善させる事がある。散歩をしたり、車椅子、ベッドのまま出かけ、自然や人びとと触れ合う。好きな写真、絵画を飾る。音楽を活用する。 |
コルチコステロイド(全身倦怠感の改善に有効/予後を考慮し、少量より慎重に投与)、塩酸メチルフェニデート(うつ病、ナルコレプシーの治療薬で全身倦怠感、オピオイドによる眠気に有効) |
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§2−2 |
食欲不振/ターミナルケア(終末期ケア)
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食欲不振は疼痛を超えて全身倦怠感に次いで多く訴求される。高カロリー輸液は生命予後1ヶ月くらいの患者さんでは、悪液質による代謝異常の状態となり、殆ど無効。高カロリー輸液は感染症などの合併症を増大させたり、高カロリー輸液が、食欲不振、口渇、悪心、嘔吐、胸水、腹水などを増悪させたり、高血糖、低血糖、電解質異常などの代謝異常の原因となったりする。進行癌では自律神経の機能異常や胃内容排出の障害がみられる。 |
食事は患者さんの楽しみで、嗜好にあうものを食べ易いように工夫(食物の形、量、味付け、喉越しよく<刻み食、麺類、果汁、シャーベットなど>、盛り付け、彩り、香り、食器などの工夫と、安楽を第一にする。カロリー、体重にこだわらない事。死が近づいて来たならば、食事摂取量の低下は自然な事として受け入れる。 |
メトクロプラミド(消化管運動調節作用、中枢性・末梢性制嘔吐作用/悪心、嘔吐、食欲不振、腹部膨満感などの消化管機能異常に適応)、合成プロゲステロン製剤(乳癌、子宮体癌のホルモン療法/悪液質の治療に有効、転移性乳癌の治療では抗腫瘍効果に関係なく食欲増進、体重増加がみられる)、コルチコステロイド(全身倦怠感、食欲不振に有効、その他脳浮腫、神経圧迫、骨転移、腫瘍熱、高カルシウム血症、癌による閉塞症状、癌性リンパ管症、癌性胸膜炎、癌性腹膜炎、などにも効果がある) |
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§2−3 |
便秘/ターミナルケア(終末期ケア)
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末期に便秘を訴求する患者さんは多い。排便困難、排便時痛、渋り腹、残便感、痔、悪心・嘔吐、腹痛、腹部膨満感、鼓腸、放屁、テネスムス、下痢などがあり、腹部腫瘤、腹部膨満などは癌性腹膜炎と間違えられる。宿便もある。便秘をしない様に配慮するが、下剤を使用する事も考慮しなければなりません。排便に有用な要因があるか、確認することも大切。完全な腸閉塞でなければ、非刺激性下剤(難下剤)も考慮できます。但し効果が無く、疝痛や腹部膨満感が有るようならば直ちに中止しなければならない。 |
水分摂取や食物繊維の摂取も促がします。ですが、実情では摂取困難なことが多く、効果もなかなか難しいことが多い。便意を患者さんが訴えるようなら、機会を逸しないようにする事が大切です。トイレや、ポータブル便器の使用が望ましい。ベッド用の便器は出来るだけ避けたい。適度の運動や腹部マッサージ、腸管運動を促進させる入浴、熱気浴なども試みる事もできます。 |
腸閉塞が無ければ直腸内の宿便の有無を確認し、宿便があれば、摘便、座薬、浣腸などで排便を促がす。軟らかい宿便が直腸に存在するなら、センナエキス、センノシド、ピコスファートナトリウムなどの刺激性下剤の投与を考慮する。不十分なら非刺激性下剤の追加も考慮し、宿便が直腸に存在しなければ、刺激性下剤を投与し、これで不十分であれば、非刺激性下剤を追加する事になります。 |
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§2−4 |
呼吸困難/ターミナルケア(終末期ケア)
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呼吸困難は末期の癌患者さんで50%、肺癌患者さんでは70%が訴求するとあります。突然発症するものは気道閉塞や気胸、心不全示すことが多く、数時間〜数日かけて出現するものは肺炎や胸水貯留、数週かけて出現するものは肺腫瘍の増大や貧血を意味する事が多い。 |
クッションや枕、バックレスト、オーバーテーブル、ギャッチベッドなどを利用して、安楽な体位を取れるよう工夫します。室内の温度、湿度も適切な(快適な)状態にします。排痰(体位ドレナージ、カッピング、バイブレータ、で喀痰排出を促がします。)、呼吸訓練など、有効な方法があります。呼吸困難に陥っている時は、患者さんは極度の死への恐怖を生じ易く、患者さんの傍で、訴えを充分聞き取り、その不安を共感する事や病態の説明できる資格のある関係者は情報を告げ、適切な治療方法がある事や患者さんの不安を軽減するように努めます。 |
(* 左端より続きます。)不安は呼吸困難を増強させます。呼吸困難は不安を増強させます。この悪循環を除くために向精神薬が有効な場合があります。気管支平滑筋の弛緩や気管支拡張、呼吸中枢の刺激、横隔膜の緊張性亢進、絨毛運動の亢進、自覚的な呼吸困難の軽減に気管支拡張薬(アミノフィリン、テオフィリン)が有効な場合があります。 |
原因に応じて抗生物質、気管支拡張薬、利尿薬、強心薬、コルチコステロイド、輸血などが考慮されます。胸腔穿刺、胸膜癒着術なども検討され、これらが無効な場合は酸素療法、薬物療法を行ったり、酸素飽和度が充分でも呼吸困難が持続すれば薬物(オピオイド、コルチコステロイド、向精神薬中心)による症状緩和が必要になります。モルヒネなどは鎮咳作用もあるため呼吸困難に有効です。コルチコステロイドは上大動脈症候群、癌性リンパ管症、放射線治療による肺炎、癌性胸膜炎に有効です。(* 右端に続きます) |
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§2−5 |
悪心・嘔吐/ターミナルケア(終末期ケア)
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悪心・嘔吐時は唾液分泌亢進、冷や汗、顔面蒼白、めまい、徐脈・頻脈、血圧低下などの自律神経反応を伴う事が多い。多くの原因が関連している事が多いが、特に薬物(オピオイド、ジギタリス、抗菌薬、抗悪性腫瘍薬、非ステロイド性抗炎症薬、抗うつ薬など)には注意する。病態に応じた適切な制吐薬が処方されます。必要に応じ、口腔内の状態、腹部(腸蠕動、腹部膨満、腹水、肝腫大、腹部腫瘤、直腸診、脳腫瘍などが検査確認されます。必要に応じ腹部X線撮影、肝機能、腎機能、炎症反応、電解質(特に高カルシウム血症)、尿検査などが実施されます。 |
嘔吐中は背中を優しくさすり、不安や恐れを和らげるように応対します。嘔吐が落ち着いたら、口腔内に残った吐物ヲうがいや口腔清拭で取り除き、速やかにニオイ、食物、吐物などを遠ざけリラックスできるよう体位を工夫したり、不快感は取り除く。悪心・嘔吐が持続しなければ、(患者さんが希望されれば)摂食する事もできます。可能なら、流動食や消化の良い食物を少量ずつ摂ってもらったりする。吐く事を前提で摂食してもらう事も考慮する。 |
薬剤が原因ならば、中止あるいは他の薬物に変更します。便秘・宿便が原因ならば、除去します。腸閉塞が原因の場合には、身体所見、腹部X線写真などから、閉塞の部位と程度を確認して対処法が検討されます。転移性脳腫瘍(頭蓋内圧亢進)が原因の場合、放射線治療やコルチコステロイドの投与が検討されます。胃内容物の停滞が原因の場合には、メトクロプラミドが投与されます。胃粘膜刺激が原因ならば、制酸薬やH2受容体拮抗薬、胃粘膜胃局所麻酔薬が検討されます。心因性であれば抗不安薬の投与や精神的援助が検討されます。 |
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