子宮肉腫・症状・診断・療法・特徴

 home(癌&癌のキーワード)>menu>子宮肉腫        子宮肉腫

子宮肉腫・症状・診断・療法・種類・分類・特徴



     
§1 子宮肉腫


    
 子宮肉腫は極めてまれな癌ですが、その発生頻度は他の組織型の癌より増加が著しい癌です。子宮頸癌や子宮

     体癌は子宮の上皮成分から発生しますが、子宮肉腫は筋、結合組織などの非上皮成分から発生した悪性腫瘍で

     予後の極めて悪く、治療法やスクリーニング方も確立されていない癌です。子宮に確認される悪性腫瘍の中でも

     5%程度を占めるものです。






 home(癌&癌のキーワード)>menu>子宮肉腫



     
§2 子宮肉腫の症状



     
§2−1 平滑筋肉腫の症状/子宮肉腫


     平滑筋肉腫は子宮筋腫の症状と類似する部分があります。初期症状は殆ど自覚されず、不正.出血(60%)、

     腹痛・腹部不快感(50%)、消化器・尿路系圧迫症状(30%)、腹部腫瘤感(10%)などがその自覚症状です。

子宮筋腫と平滑筋肉腫とは少しずつ症状に違いがあ

ることが指摘されているが医療関係者には内部不均

一や出血、変性を示す場合は子宮筋腫との診断だけ

ではなく子宮肉腫の疑いも求められます。(画像上

では子宮肉腫に特異的な所見は無いが、カラードプ

を用いた場合、肉腫では腫瘍内血流が増加してい

る、多くの場合は手術標本の術後病理検査で診断さ

れる)リンパ節転移がある場合や腫瘍が子宮外へ進

展しているV〜W期の予後は極めて不良と言わざる

を得ない状況です。高度悪性度の平滑筋肉腫ではV

〜W期で90%以上の方が2年以内に死亡しており

ます。T〜U期でも5年生存率が10〜50%と厳

しい状況です。中等度の悪性平滑筋肉腫では病変が

子宮内に留まっていれば5年生存率は80〜90%

です。子宮頸部肉腫では平滑筋肉腫の5年生存率は

50%前後です。






     
§2−2 子宮内膜間質肉腫の症状/子宮肉腫


     子宮内膜間質肉腫の症状は帯下増加や不正.出血がその主なもので、下腹部痛や下腹部不快感が続きます。

     予後は低悪性度内膜間質肉腫では10〜20年後でも局所再発するとされています。






     
§2−3 癌肉腫の症状/子宮肉腫


     癌肉腫の症状は帯下増加と不正.出血で、腫瘍の塊が膣内に突出する事もあります(腫瘤分娩)。平滑筋肉腫や

     異所性細胞から発生した肉腫が混在した場合には子宮筋腫と類似した症状を示します。




 home(癌&癌のキーワード)>menu>子宮肉腫




     
§3 診断/子宮肉腫


     子宮内膜に発生する内膜間質肉腫や癌肉腫は子宮内膜癌や他の内膜病変と鑑別をしっかりしなければなりません。

     検査は針生検や内膜掻爬で検査をしますが内膜細胞診では陰性となる事が多く、血清LDHが高値になる事があり、

     上皮成分が混在する場合にはCA125.CEA.CA19-9などの腫瘍マーカーでの確認もあります。子宮内腔に病変を認め

     ます場合には、肉腫を疑う事になります。頸部肉腫では細胞診は擬陽性という事が多く生検が行われる事になり

     ます。






     
§4 療法/子宮肉腫


     基本的には病変部を摘出しまして、その後、放射線療法や化学療法を併用します。




     
§4−1 手術療法/子宮肉腫


基本的には腹式単純子宮全摘出術と両側付属器

切除術で、以下の場合には拡大子宮全摘出術適

応となります。@病変が子宮頸部に進展してい

る。Aリンパ管に侵襲している。B悪性度の高

い腺癌(明細胞腺癌、漿液.癌、低分化型腺

癌の混在が認められる場合で、骨盤内リンパ節

の郭清も必要に応じて実施されます。進行期に

つきましては癌肉腫を除いた場合は、T期では

リンパ節郭清の必要性がない。しかし、リンパ

節転移が認められると、予後は不良になり、再

発・転移も少なからずあります。そのため術後

化学療法、放射線療法が必要になります。頸部

肉腫では広汎性子宮全摘出術となります。






     
§4−2 化学療法/子宮肉腫


     子宮肉腫の化学療法の有効性などは確立されておりません。組織型によっては抗癌剤の感受性が大きく異なり

     ますので、都度決定する事になります。癌肉腫ではイホスファミドは膀胱障害が強かったが膀胱保護薬のメスナ

     との併用で大量療法が可能となり、イホスファミドの有効性が認められつつある様です。単剤よりも他剤との併用

     が多い。内膜間質肉腫ではやはりイホスファミドに対しての感受性を示すとされ、シスプラチンドキソルビシン、等

     と併用されます。内膜間質肉腫では黄体ホルモン受容体が存在するため、高用量黄体ホルモン製剤療法の有効

     性が知られております。平滑筋肉腫は化学療法は最も奏功しにくい組織型で現状ではシスプラチン+エトポシド

     中心にした多剤併用療法が試みられております。




 home(癌&癌のキーワード)>menu>子宮肉腫




     
§4−3 放射線療法/子宮肉腫


     放射線療法の有効性は確率しておりませんが、外照射・腔内照射の併用により肉腫の原発病変の出血・骨盤内臓器

     の圧迫症状の改善が期待できるという資料があります。上皮性・間葉性混合腫瘍の術後補助療法として20%に

     奏功するという報告があります。






     
§5 子宮肉腫の種類


     子宮肉腫には平滑筋肉腫(非上皮成分の子宮筋の悪性化)と子宮内膜間質肉腫(非上皮成分の子宮内膜間質細胞

     が悪性化)と上皮性・間葉性混合腫瘍(非上皮性腫瘍/間葉性と上皮性腫瘍の混合型 VB、 中には異所性由来

     で単独のものもある TB)、腺肉腫(肉腫に良性の上皮性腫瘍/腺腫が含まれる)、癌肉腫(肉腫と悪性上皮性

     腫瘍が混在)、その他(横紋筋、軟骨、骨、脂肪組織、血管などから発生する肉腫)などがあります。



           -子宮肉腫の種類例-
横紋筋肉腫Tb1、骨肉腫Tb3、軟骨肉腫

Tb2などは子宮に存在しない組織(横紋筋、

骨など)が腫瘍化したのですが、別な部位(異

所)よりの迷入により発生母地が出来たものと

考えられております。これに上皮性の癌や腺腫

が混在したものが癌肉腫(間葉性・上皮性混合

腫瘍)というものです。平滑筋肉腫TA1(平

滑筋が悪性化したもの)と子宮内膜間質肉腫

TA2(内膜間質細胞が悪性化したもの)は純

粋型肉腫です。



     §6 子宮に発生する肉腫の分類

T 純粋型肉腫
TA 子宮(ミュラー管)に通常存在する細胞に由来するもの(同所性)
 A1 平滑筋肉腫
 A2 子宮内膜間質肉腫
TB 子宮(ミュラー管)に通常存在しない細胞に由来するもの(異所性)
TB1 横紋筋肉腫
TB2 軟骨肉腫
TB3 骨肉腫
TB4 脂肪肉腫
TB5 血管周囲細胞腫
U 混合型肉腫
TのAとBが混在しているもの
V 上皮性・間葉性混合腫瘍
VA 肉腫成分が子宮(ミュラー管)に通常存在する細胞に由来するもの(同所性)
VA1 腺肉腫
VA2 癌肉腫
VB 肉腫成分が子宮(ミュラー管)に通常存在しない細胞に由来するもの(異所性)
VB1 腺肉腫
VB2 癌肉腫






     §7 子宮肉腫の特徴


     
§7−1 平滑筋肉腫の特徴/子宮肉腫


     平滑筋肉腫TA1はその名の如く平滑筋支配の平滑筋由来悪性腫瘍です。20〜70歳代と広範囲に見られますが、

     好発年齢は50歳代です。平滑筋肉腫の5〜10%は子宮筋腫の悪性化したものと考えられております。その

     好発部位は子宮壁に限局するもので子宮壁に瀰漫性に浸潤するタイプのものもあります。肉眼的に柔らかく内部

     にはしばしば、出血や壊死がみられます。腫瘍の細胞は紡錘形、円形の巨細胞(核分裂像もみられる)でその

     腫瘍細胞の各分裂像数(光学顕微鏡で10視野あたりの核分裂像数を計数する)が悪性度とほぼ一致します。

     「その悪性度は@分裂像数が5個以下で周囲浸潤が無ければ臨床経過は良好、A分裂像数が5〜10個の場合、

     予後は良好とされるが、時として局所再発、転移が確認される。B分裂像数が10個以上になると極めて悪性で

     あり、病変が子宮内に留まっていても5年生存率は20%以下と厳しい状況にある。」平滑筋肉腫は子宮筋腫と

     類似した症状があるが、子宮肉腫の症状は病変が子宮筋肉層内に浸潤している場合や、内膜腔内に突出するかに

     よっても出現する症状に異なるものがありますが、その主な症状は不正.出血や、貧血、疼痛、持続する帯下

     周囲臓器への圧迫症状、腫瘤の急激な増大、腫瘤分娩などがあります。組織学的には良性の平滑筋腫でも、

     局所再発、下大静脈〜左心房系への脈管内播種や、肺への遠隔転移がみられる低悪性度平滑筋肉腫もあります。




 home(癌&癌のキーワード)>menu>子宮肉腫




     
§7−2 子宮内膜間質肉腫の特徴/子宮肉腫


     子宮内膜間質肉腫は内膜間質由来の悪性腫瘍です。子宮内膜から子宮内腔にかけてポリープ状の腫瘤を形成し、

     その腫瘍は細胞性に富み、索状に増殖し、30〜60歳代にみられます。その好発年齢は60歳代で、内膜から

発生するため、プロゲステロンに反応する可能

性があるものと示唆されています。悪性度は細胞

核分裂像の数で10視野あたり10個以下の場合

は大概、著明な筋層・脈管浸潤を来たします(核

分裂像が5個以下の場合は間質結節と呼ぶ事もあ

るが、著明な脈管浸潤であるのでリンパ管内間質

筋症とする、低悪性度内膜間質肉腫になる)。予

後も良好で5年生存率も80%前後です。細胞核

分裂像の数が10個を越えると極めて悪性となり

、予後も不良です。リンパ行性転移、浸潤も著明

で、血行性転移も末期には確認されます。但し10視野当たりの核分裂像数が10〜15個出会っても浸潤が

確認されなければ低悪性度に分類されます。






     
§7−3 癌肉腫の特徴/子宮肉腫


     癌肉腫は子宮の上皮成分と間葉性成分の両方の発生があり、腺肉腫(浸潤より外向性の発育を示す腫瘍で、間葉性

     成分は内膜間質肉腫である事が最も多く、平滑筋肉腫や異所性細胞から発生した肉腫が混じる事もあります。)は

     上皮性成分が良性で間葉性成分が悪性であり、上皮成分、間葉性成分ともに悪性のものが癌肉腫である。(上皮

     成分は低分化の腺癌であることが多いが、扁平上皮癌が混じる事もあります。腫瘍は子宮内腔に突出し子宮体部

     の深部に浸潤します。悪性度も高く早期に転移・浸潤する厳しい癌です。)近年の子宮肉腫の増加の原因はこの

     癌肉腫の増加が響いている。






     
§7−4 子宮頸部に発生する肉腫/子宮肉腫


     
まれに子宮頸部にも肉腫が発生する事があります。閉経後に確認されるケースが多いのですが、組織型の肉腫が

     発生します。初期無症状ですが進行しますと、帯下の増加、組織片の排出もみられます。特殊なケースでは胎児性

     横紋筋肉腫も確認されます。(3歳以下の女児に見られるが成人にも時に発生します。)








     * 上皮成分/体表面や中腔性臓器の内表面などの表面を被覆するもので体腔表面を覆うものは中皮、血管やリンパ

     管などの内腔面を覆う上皮は内皮と呼びます。上皮は細胞間の基質が極めて乏しいものの、上皮細胞どうしの

     接着は密で強いものです。


     * その他肉腫/ミュラー管の未分化の間葉性細胞が軟骨、骨(中胚葉性細胞)などに分化するために起きるのでは

     ないかと考えられております。単独の肉腫として存在する事も有るが、大概、上皮性・間葉性混合腫瘍の形をとる

     ため中胚葉性混合腫瘍やミュラー管混合腫瘍と呼ぶ事もあるが、現況は癌肉腫と纏められた呼称になっている。


     * 子宮内膜間質細胞/子宮内膜の表面は腺細胞などの上皮で覆われておりますが、その支持組織が間質です。



     * カラードプラ/ドプラ効果により周波数の偏位を利用して超音波画像に血流の増加を加味したものでこの情報

     から解析する方法がパワードプラ法といいます。一般に癌には豊富な新生血管があり、増加する腫瘍血流信号を

     ドプラ法を用いて画像化します。低エコー領域が血流の有無を捕らえて癌や非特異的病態によるものかの鑑別を

     します。パワードプラ法は感度が高く、角度による影響を受け難いとされ、造影剤の研究で更に微細な血管内の

     超音波反射体を増加し画像化します。








      * ご覧になりたい項目の金色ボタンをクリックして下さい。ご希望のページへジャンプします。

頭頸部 脳腫瘍 上顎洞癌 舌癌 咽頭癌
喉頭癌 甲状腺癌 食道癌
胸部 肺癌 乳癌 縦隔腫瘍
腹部  胃癌 肝癌 胆嚢癌 胆管癌
膵癌 腎癌 膀胱癌 大腸癌
. .癌 膣癌 子宮頸癌 子宮体癌
子宮肉腫 卵巣癌 卵管癌 絨毛癌
前立腺癌 .腫瘍
全身性 神経芽腫 骨腫瘍 皮膚癌 多発性骨髄腫
急性白血病 慢性リンパ性白血病 悪性リンパ腫
成人T細胞白血病 慢性骨髄性白血病
その他 抗癌剤 転移・再発 疼痛緩和ケア ターミナルケア
腫瘍マーカー













 home(癌&癌のキーワード)>menu>子宮肉腫
-癌&癌のキーワード-
(C)allright reserved